カブでヨーロッパ一周編

 地中海は船旅で 春編 [スペイン] (2001/05/09-05/13)
・05/09 黄砂と風の中を走る
・05/10 Palma de Mallorca
・05/11 暑いバルセロナ
・05/12 ガウディの遺したもの
・05/13 豪華客船

通貨単位:Ptas(ペセタ)/100Ptas=約 66.6円 ITL(イタリアリラ)/100L=約 5.6円


05/09 曇り/雨 黄砂と風の中を走る Denia-Palmaフェリー/BALEARIA EUROLINIES MARITIMES/370.3km

 曇天でおまけに風も強いが11時前に出発。目的地はアリカンテだったが、その先のDeniaまで来ることが出来た。

 天気が悪いと寄り道する気もなくなり、ひたすら無心で走るので走行距離はのびる。このままだと無我の境地を極めそうだ。

 途中しばしば雨にやられたが、アリカンテを越えてからの雨はサハラからの砂を含む日本でいう黄砂の強烈版。泥水が降ってくると言ってもいいくらい。ほとんど前が見えなくなるから辛い。乾いた後も服やカバンも泥だらけ・・・

 そういえばスペインにも感応式信号があり、普段は赤信号で車が下に来た瞬間黄色の点滅に変わる。しかしカブには全く反応してくれないし、日本のように二輪車用のボタンも無い。普段は無視して走るのだがちょっと気はひける。

 Deniaに来た目的はマリョルカ島に渡る為。パリでくらった1週間を取り戻すのと、地中海の船旅をしてみたかったという2つの目的。7時頃Deniaに着いて時間を調べたら9時発があり、それに乗ることにした。出発を待っている間、カブが珍しいのか大勢の人が寄って来た。あるおじさんがえらく流暢な英語で話し掛けてきたので、スペインにもきれいな英語を話す人がいるんだなぁと思ったらノルウェー人旅行者。スペイン人の英語はえらく分かりにくい。この前一緒にフラメンコを見に行ったカナダ人もそう言っていたな。

 9時発といいながら、オレが乗り込んだのが9時過ぎ。時間に関しては非常にルーズ。船に乗ってからどこへ行けばいいのか分からなかったので、いかにも陸送の運ちゃんみたいな人に聞いたら食堂みたいなところに連れて行かれた。トラックドライバーには夕食がサービスされるようだ。乗組員の人が「ドライバーですか?」と聞くので「モト」と答えると一瞬困った顔になったが、周りの運ちゃんが「別にええやんけ、あんたが損するわけやないねんから食わしたれや」(というような事を言っていたと勝手に推測)と言うので、しぶしぶ了解して飯を食わしてくれた(笑) なかなかうまかったし、パンとワインとフルーツは取り放題で儲けた。

 満腹になり、ツーリスト席(一番安いところね)を探す。船はそんなに広くないのですぐに見つかった。飛行機の座席のようで一見リクライニングできそうなのだが、リクライニングできない曲者。さらに肘掛も上げられないが、うまく体をもぐりこませ横になる方法を会得し、眠りにつく。

05/10 雨 Palma de Mallorca Granada/HOSTAL RESIDENCIA Los Girasoles/18.5km

 強風で船はかなり揺れるが、深夜1時過ぎにIbizaに立ち寄り、朝7時半頃Palmaに到着。予定では6時着となっていたのでかなり遅れたのだろう。到着後、まずバルセロナ行きのフェリーを探す。ここに発着している船会社は2社だけのようですぐに見つかった。高速船とフェリーがあり、もちろんフェリーの方が安いが、フェリーは夜バルセロナに着くので朝7時発の高速船(バルセロナまで3時間半)を利用しよう。

 雨の降る中宿を探すが、安宿が見つからない。市内をぐるぐる回るが高そうなホテルばかり。マリョルカ島のあるバルレアス諸島はリゾート地としても有名だからかもしれない。さらにグラナダで購入した水切り(ワイパーみたいなもので、風防の水を切るのに重宝していた)を落とす。そういえば何か音がしたと思ったんだけどもう遅い。

 結局、中心街から数キロはなれたところで宿をゲット。約2,500円で風呂、トイレ付きでさらにプールまであるのはお得だろう。でも雨で寒くて泳げないのが残念。今日はマリョルカ島を一周する予定だったが、この雨ではキャンセルせざるを得ない。しかし部屋にはテラスがあり、そこで執筆活動も悪くは無い。さらに疲れもたまっているからベットでゴロゴロ。宿の人も親切で明日朝発のフェリーの予約もしてくれた。

 明日バルセロナ到着後、イタリアのジェノバへ渡る予定。6月頭にパリへ戻るという制約があるのは、結構面倒くさいな・・・

05/11 曇り/雨/晴れ 暑いバルセロナ Barcelona/HOTEL Auto Hogar/33.3km

 なんと朝4時半起き。5時過ぎに曇り空の下フェリー乗り場へ向かう。途中ガソリンスタンドに寄ったが「深夜だからお釣りがない」とか言ってきたので、クレジットカードで払うと答え給油。で、カードを渡してカードリーダーに通すが使えなかった。カードの照合が出来ない時間なんてあるのか?持ち合わせの小銭で払うにも100Ptas足りない。困ったなぁと思っていたが、再度ポケットを発掘すると100Ptasコインが出土。無事事なきを得た。

 フェリー乗り場に6時迄に来るようにと聞いていたのに、チケット売り場が開くのが6時だった。チケット購入後フェリーに乗り込む。このフェリーは大型高速船でかなり豪華。船というより飛行機だね。搭乗券も飛行機と同じだし、客は手荷物以外は預けることになっている。普通の船は甲板に出られるが、この船は外には出られない。中は全室禁煙でシートも飛行機と一緒。座席前のポケットには非常口の説明と雑誌とゲロ袋まであり、まさに飛行機だ。違うところと言えば、中が広いので座席はのびのびしていてカフェバーまであるところくらいかな。船が揺れる時には「Attention please.」っていうアナウンスまであるぞ。雑誌によると最大速力は47ノットらしい。時速でいうと約87km/h。船としては相当速いぞ!これなら蟹の密漁もお手の物だろう。フェリーで6時間のところを3時間半で結ぶだけのことはある。

 バルセロナ到着後ジェノバ行きの国際フェリーを探す。分かりにくいほったて小屋みたいなところがチケット売り場だった。時間を確認すると明日の深夜(正確には明後日の早朝)2時発。チケットは明日の午後3時以降に買いに来てというので宿探し。しかし暑い、暑すぎる・・・街角温度計は29度。オレ好みの見所である海洋博物館近くの電話付きホテルにチェクイン。汗でびっしょりになったのですぐに洗濯し、街をぶらつく。

 いかにも浮浪者風の人がたばこをくれというの1本あげた後、お互い片言の英語とスペイン語で話し込んでしまった。傍からみてたらおかしな光景かもしれないが、楽しいひと時を過ごせたよ。その後海洋博物館へ。ここの博物館はリスボンのものを遥かに上回っていた!素晴らしい展示品の数々と展示方法。さらに日本語の音声ガイドまであって3時間近く居座ってしまった。しかもここの音声ガイドは珍しくヘッドホン形式(受話器みたいな不恰好なものが主流。大勢の人が受話器を耳に当てて見学している光景はかなり異様だ。)で、ポイントへ来たらリモコンで再生する仕組みまであるハイテク品。しかもタダで使えるという親切っぷり。オレ基準では5つ星博物館だね。

 明日は荷物をホテルに預かってもらって(交渉済み)、夜までバルセロナ観光。さあ何処へ行こうかな・・・

05/12 晴れ ガウディの遺したもの Barcelona-Genovaフェリー/GRANDI NAVI VELOCI/30.4km

 「アントニオ ガウディ」と聞いて知らない人はいないだろう。独創的な個性と想像力を発揮したスペインの建築家である。彼が生涯を過ごしたここバルセロナには、彼の遺した多くのものがある。

 左写真のサグラダファミリア教会もそのひとつで、実際にこの目で見て彼が本当に天才であったことをはっきりと感じることができた。ちなみに、この教会の建設費はお布施や寄付、オレ達の入場料から全て出ているらしい。100年以上前から始まり現在も建築中で、全て完成するまであと200年はかかるという。これほどの年月を掛け、さらに自分のお金を使ってでも作って欲しいという人がいる程の魅力がこの作品にはあるのだ。

 他に有名なカサ・ミラ(右写真)も見たが伝統的な建築物に見られる直線と平面はほとんど無い。作られてから約100年経った今でも新鮮さが感じられるだろう?

 ガウディが初めて設計した建物は町の教会。それはなんと小学生の時。その後数々のものを設計しバルセロナの建築学校へ入る。そこで学んだ彼の卒業作品には先生達も唖然としたそうだ。彼の提出した作品は建物の見取り図とともに行き交う多くの人が描かれていたのだ(通常、人は書かないらしい)。先生のほとんどは認めないと言ったらしいが、彼の天才さを理解する先生もいてなんとか卒業できた。卒業後、いくつかの作品がある実業家の目にとまったおかげで現在の多くの建物があるというわけだ。いつの時代も天才は理解されないものだが、彼はまた強運の持ち主でもあったのだろう。

 夕方港へ行きジェノバ行きフェリーの切符を購入。国際フェリーのため、港に入る前にゲートがあるが、そこで警察に止められた。「イタリア、ジェノバ」というとすぐに通してくれたが、何奴と思われたのだろうな(笑)
 切符購入時に受け付けのおねーさんは夜(といっても夕方だが)8時に来いという。「出港が2時やのに早過ぎるんとちゃうのん?」と聞くと「出港は1時半ですよ」という返事。予定表と違うのはさすが大陸的といったところかな。30分早いだけで何で8時やねんとも思ったが8時に行くことにした。時間を潰すために港を散策。かなり大きな港でバルセロナ市街を見ることが出来る。

 おねーさんの言う通り8時に港に行くと、すぐに乗船。しかーし!乗船開始が8時であってこんなに早く来る必要は全くなかった。しかもイタリアの船会社だから船内でスペインペセタは使えない。まぁ紙幣は使えるからなんとかなるんだけどレートは悪いんだろうなぁ。と言ってもそんな大量にペセタを持ってないから金額的には大した事ないんだけど、気持ち的にね。さらにうっかりしていたことにコインが結構余ってるんだよ・・・
 しかし、 国が変わると通貨も変わり、ゼロの数が増えたり減ったりして結構戸惑うんだよなぁ。

 船自体は長距離国際フェリーだけあって超豪華!詳しいことは明日書くことにしよう。

05/13 晴れ 豪華客船 Arquata Scrivia/HOTEL ARQUATA/51.6km

 このフェリーを一言で表すと豪華客船。バルセロナ-ジェノバ間は陸路の方が早く着くので、船を使う人たちは優雅な船旅を過ごしたいと思っている人がほとんど。というよりオレ以外はみんなそうだろう。実際、一番安い「BUTACA」という区分になる椅子席のデカイ部屋が4つあるのだが、オレのいるRAFFAELLOという部屋の客はオレひとり。100席以上あるひとり部屋だぜ!

 フェリーの中には各種娯楽施設が揃っており、バーが4つ(ひとつはピアノバー)、レストランが2つ、他にディスコやカフェテリア、映画館、土産物屋、さらにプールやカジノまである。360度水平線が続くこの船上で、18時間も過ごすというのは嬉しくもあるが切なくもある・・・

 Crusoe搭載の長時間駆動vaioのおかげで、ほとんど一日中テラスの椅子を占領しホームページを作っていたが、英語への翻訳作業は非常に疲れる。日本語版を作るだけでも大変なのに半ば仕事だと思わないと続かないな、こりゃ。

 仕事に疲れたら青空の下昼寝。フェリーのなかではのんびり過ごせたといえば過ごせたな。

 ジェノバには定刻通り20時に到着。船上から見渡せる町の景色はなかなか美しい。下船後GPSの用意をしていると数人のイタリア人が集まってきた。フェリーの関係者のようで英語は話せないが、それでも会話は成立する。旅の話、これからの予定、さらにGPSの事。「S35という道路に出たい」と言ったら、親切にもオレが理解するまで熱心に行き方まで教えてくれた。おかげで(と言っても途中でスクーターの兄ちゃんにも聞いたが)S35へ出ることができた。

 しかし、イタリアの交通マナーは驚異的。JAFメイトの危険予知より予想しにくいぞ!車が突然出てくるのは当たり前。優先権の無い道路からもホイホイ出てくる。今にも出てきそうな車が見えたので減速したら駐車車両だったりもした。他にはいきなりドアが開いたり、道路に穴ぼこがあったり。信号待ちで行列が出来ていたら対向車線を走って先頭に割り込む輩まで。対向車が来てるにも関わらず当然のように追い越しもする。また、ライダーは輪を掛けていい加減だ。グラナダの原付も最悪だったが(車が来てなかったら信号無視、前が詰まっていたら対向車線を平気で走る、一方通行も逆走)、イタリアはもっと凄いぞ・・・

 S35沿いにあるテキトーなホテルに泊まるつもりが峠道のため、全然ホテルがない・・・途中、「Hostelia」という看板を掲げた店に入り「一晩泊めてくれ」と言ったらおねーさんに大笑いされた。どうやら宿泊施設ではなかったようだ。店のおじさんは親切にもホテルのある次の街を教えてくれた、が残念ながらよくわからなかった。日も暮れ暗闇の中、峠道を走る続ける。街を通過する時にバーの前にたむろするライダーがいたのでホテルはどこか聞く。ひとりだけ少し英語を話せる人がいて10km先にあるよと教えてくれた。というわけでそのホテルにチェックイン。親切にも駐車場のなかにカブを入れさせてくれた。日本人は珍しいらしく(特に何もない小さな町なので、こんなところに泊まる日本人なんてほとんどいないだろう)「ナカタを知ってるか?」と聞かれたよ。

 夕食は併設するレストランでピザ。焼きたてでアツアツだったため口の中を火傷してしまったがウマかった。明日はスイスのルガーノを目指してイタリアを北上する予定だ。


戻る 続く