カブでヨーロッパ一周編

 アルプスに挑む [スイス・イタリア] (2001/05/14-05/17)

・05/14 消えた100F札
・05/15 スキー場探し
・05/16 One and Only
・05/17 のどかな町

通貨単位:ITL(イタリアリラ)/100L=約 5.6円 CHF(スイスフラン)/1F=約 70円


05/14 曇り 消えた100F札 Lugano/HOTEL Garni BESSO/191.7km

 11時頃出発。昨日も書いたようにイタリア人の運転は炸裂している。イタリアの道路は1車線に2台がギリギリ入るくらい幅が広い。その事が彼らの強烈な運転に関係しているのかもしれない。側道から出てくる車は、必ずと言っていい程ボンネットの長さ分道路にはみだしてくるので、うかうかと右端を走ってはいられない。また、他の国では郊外の道路が町を通過する時に多くの車が減速するが、イタリアではお構いなし。制限60km/hのところをサイレンをならしていない救急車やパトカーでさえ120km/h位でかっ飛ばすのには絶句。

 スイスのルガーノへ行くにはミラノを通らなければいけない。地図上ではミラノを迂回しているように見えるのだが、実際はそうではなく街中の車の多いところを通過する道だった。マナーなんてあったもんじゃないね。みんなが「オレが行く!」という感じ。対向車が来ていてもガンガン追い越す。一見もうろくしかけのじいさんに、ロータリーの中で追い越されたときにはヒヤっとしたよ。こんなとこで追い越すな、ボケ!

 また、イタリアのガソリンスタンドは店員のいない料金前払いのセルフ式が多く困り物。最低10,000Lだからカブでは余ってしまうのだ(無鉛ハイオク3リットルで6,000L強)。そのため店員のいるスタンドを探すのには苦労した。

 イタリア-スイス国境はまともなゲートがあり、通過する車をチェックしていた。パスポートチェックは無かったが管理官と少し話をした。といっても世間話だけどね。中には止められて荷物をチェックされている車もあったから、一応ちゃんと管理しているのだろう。

 スイスに入ると車のマナーはガラリと変わる。なんと制限速度をほとんどの車が守っている。そんな中を強烈なスピードで抜いていった車が1台いたが、やっぱりイタリアナンバーだったよ・・・

 さらに通貨も変わって、アタマがこんがらがる。ちなみに125,000イタリアリラが100スイスフランに相当。

 ルガーノに到着後、インフォメーションで聞いた安ホテルにチェックイン。といっても1泊3500円強。その後ATMで現金を引き出し、キオスクでミシュランのスイス地図を購入し夕食へ。イタリア国境に近いせいかイタリア料理店が多い。言葉もイタリア語だしね。無難にミネストローネとパスタを食べる。

 町をぶらぶらしているとカジノを見つけたので、話の種にでもなるかと思い入ってみた・・・普通なら損をしてしまうの結末なのだが、なんと100F程儲けてしまった!これからしばらく物価の高いスイスで滞在するにあたってこれはデカイ。

 意気揚々とホテルに戻り、戦果を確かめるとなんと100F札が1枚足りないのだ・・・財布にお金を入れるのが面倒くさくいつもポケットに詰め込んでいるのだが、それが災いして何かの拍子に落としてしまったようだ。カジノで儲けた分がいきなりチャラになってしまった(泣)

 ホテルのフロントで電話を借り、メールチェックとホームページの更新を試みるが接続できない。どうやらスイスは日本と同じRJ-11型でも内2線式ではないようである。これからスイスに2週間ほど滞在する予定なのに困ったもの。カプラー通信である程度の速度が出せればいいんだけど。

 明日はルガーノを発ち北上する予定。あても無く進んでみよう。

05/15 雨 スキー場探し Lugano/HOTEL Garni BESSO/0km

 朝から雨が降っていたので、ルガーノでもう一泊。しかし、この天気は困ったもの。うかうかキャンプも出来ないではないか!いつになったらいい天気が続くのかなぁ・・・

 スイスは高い山がいっぱいだからスキーなんてどこでも出来ると思っていたがそうではないようだ。ホテルのフロントのおじさんに聞いてみたが分からないと言うので、インフォメーションへ行って聞くことにした。インフォメーションのおばさんは親切にもスキーが出来そうな街に電話をして聞いてくれたが、結果はどこもclosed。雪はもちろんあるが、どこも5/1でシーズンオフに入りケーブルカーやリフトが止まるらしい。1つだけ電話に出ない街があったので、そこへはホテルへ戻ってから聞いてもらうことにした。しかしスイスでも5月のスキーがこんなに難しいとは思ってなかった・・・

 ホテルへ戻り、フロントの親切なおじさんに頼み電話してもらう。「君の英語なら絶対大丈夫だから、自分でしたら?」と言われたが、お願いして聞いてもらった。言いたいことは言えても、イタリア語なまりの英語ってオレには聞き取りにくいんだよ・・・。
  結果はなんと、雪もいっぱいあってスキー場もオープンしているらしい!でも、ここで喜ぶとぬか喜びになりかねない。シエラネバダの時みたいにね(^_^;;

 また、スキー場がオープンしていてもそこの街までたどり着けるかどうかが不明。アウトストラーダ(高速道路で、イタリア語圏ではこう呼ぶ。ちなみにフランス語圏ではオートルート、ドイツ語圏ではアウトバーン)のトンネルを使えば行けるはずだが、カブでは無理。ということは山越えのローカル道路を使うわけで、雪で閉鎖している可能性があるのだ。こればっかりは行ってみないと分からない。もしかしたら大きく迂回しないといけないかも。まぁ、それは明日の話だ。今考えてもどうにもならないからね。

 その後はルガーノ湖沿いを散歩。山と湖の景色はまさにスイスという感じで美しい。これからのスイス滞在が楽しみだ。

05/16 雨|曇り One and Only Kandersteg/Camping Rendez-vous(キャンプ場)/205.4km

 朝から北上を開始。地図上では最短の「St. Gotthardpass」と東に迂回する「Splugenpass」の2つがアルプスを越える主要ルートのようなので、その分岐点にあたる「Bellinzona」という町へ向かう。分岐点で交通状況を確認しておこうというわけだ。

 ガソリンスタンドで聞いてみたが「よくわからないからインフォメーションで聞いてくれ」と言われ、インフォメーションを探す。途中まで看板が出ているが、直前で看板が無くなる。建物を見つけるのにえらく手間取ってしまった。

 結果は「St. Gotthardpass」はアウトストラーダを使えばトンネルで通過できるが、山越えはclosed。「Splugenpass」に至ってはトンネルの手前で通行止めになっているらしい。「もしかしたら「St. Gotthardpass」のトンネルを、バイクを列車に載せて通過出来るかもしれないよ」というので、駅へ直行。しかし無残にも「その区間は列車では運べないわ」という答え・・・トンネルがあるんだから当然といえば当然だろう。車はアウトストラーダを通れば問題ないからな。「他のルートは無いのか?」とさらに問うが「impossible」の一点張り。しかし、ここで引き下がったのではスキーだけでなく北へのルートが完全に閉ざされてしまうので、オレとしてはなんとしてでも引き下がる訳にはいかない。強引に調べてもらった結果、一旦イタリアへ戻りそこからスイスへ北上し、カブを列車に載せて通過するというルートが見つかった。西へ大きく迂回しないといけないが、これ以外には北上するルートは無い。そうと分かれば進路を西に。目指すはイタリア。

 延々と続く峠道を走りスイスを抜ける。天気が良かったら素晴らしい眺めだろうが、雨で残念。さらにこのイタリア経由のルートにも「Simplonpass」という山越えルートが噛んでおり、その交通状況がわからないので、あまり余裕がなかったのだ。イタリア入国時にはパスポートチェックがあった。チェックしている間、国境の警察官と色々話をした。「この天気どうにかならないもんっすかねー?」って聞いたら「Everyday.」と言われた。毎日これではたまったもんじゃないぞ。結局チェックはものの数分だったが、20分以上居てしまった(笑)。またここで「Silplonpass」の状況を聞いたが、スイス国境までは確実に行けることしか分からなかった。スイス国境からが本格的な山越えなのに・・・

 イタリアは通過するのみ。イタリアリラをカバンの奥に入れてしまったので飯どころかガソリンも入れられない。途中で道が分からなくなったが、陽気なおじさんが声を掛けてくれて無事スイス国境へ到着。

 なんとここでもパスポートチェックがあり、さらに入国のスタンプまで押されてしまった。国境の売店には日本語で大きく「両替」と書いてあったが、こんなところを通る日本人がいるのか?

 ガソリンを補給し、雨と雲(ずっと霧だと思っていたが雲だった)に包まれた「Silplonpass」を進む。トンネルが各所にあり、さらに谷沿いの道なので衛星からの電波を受信しにくくGPSがうまく機能しない。それでもどんどん山を登っていく。眼前にアルプスが広がる素晴らしい景色が続く。曇っているにも関わらす何度も止まって眺めるが、ただ美しい。最終的には高度2,000mを少し越えた。道路には雪が残っていないが、周りは一面雪!雪国に住んでいる人にとっては珍しくもなんともないだろうが、雪の降らないところで生まれ育ったオレにとっては雪があるだけでわくわくしてしまう。でも、とにかく寒いんだなこれが。

 また途中、何台かの観光バスとすれ違った。この道はスイス-イタリアツアーの主要ルートになっているのかもしれない。これだけ素晴らしいんだから納得できるよ。

 美しく険しい山を下りBrigという町に到着。まず駅を探すが、イタリア語圏では「stazione」だったのが「bahnhof」になっていたので、初め気がつかなかった。そう、ここはドイツ語圏のようだ。駅で聞いたら、ここからさらに西へ進んだ「Goppenstein」から列車があるらしい。いかにもドイツ語的な名前。飯を食って進路を西へ。看板も良く出ており、全く迷わず駅の「載せ場(乗り場じゃないよ)」までやってきた。ゲートのおばちゃんはカブを50ccだと思ったみたいで、ちょっとだけ得した。ちなみに運賃は8F。これで前方に見える標高3,500mを越える山をトンネルで通過できることになった。
  待つこと20分、列車にカブを載せる。車は野ざらしだがバイクや自転車は室内。でも自分でロープを使い固定しないといけない。ちなみにバイクはオレひとりだったよ。

 「Goppenstein」からアルプスを越えた「Kandersteg」へはわずか15分。この15分がオレに与えられたたったひとつのルートだった・・・聳え立つアルプスを今ようやく越えることができた。

 「Kandersteg」到着後、日も暮れかかってきたのでキャンプ場へ。この旅初めてのキャンプ。ヨーロッパのキャンプ場は日本と違い、売店だけでなくレストランや時にはホテルまである。客もほとんどがキャンピングカーでのんびりと休暇を過ごす人たち。そんな中ひとりツーリングテントを張るというのもなかなかオツなもんだよ。バルセロナ-ジェノバのフェリーみたいだけどね(笑)

 またこのキャンプ場はアルプスのふもと(といっても標高も1,500m前後)にあり、景色が素晴らしい。斜面には羊が放牧されており、時折スイス土産で有名なあの鈴(名前は知らないけど)の音や泣き声が聞こえ、とてもいい雰囲気。明日はいよいよスキーの出来る町「Engelberg」だ!

05/17 雨/曇り のどかな町 Engelberg/HOTEL MARO/150.3km

 今日は早起きし荷物をまとめテントをたたもうとした時、雨が降り出した・・・木陰に張っていたのでそれほど濡れなかったがホント雨ばかりで嫌になるよ。

 スイスの道路標識はとても分かりやすい。地図上で分かりにくいところも標識に従えばいいので、中継地さえ分かっていれば迷うことはほとんどない。また、標識の中には交通状況を表しているものもある。スイス入国後からちょくちょくあり特に意識していなかったが、右写真がローカル道路の通行状況を表しているオレにとっては悪魔の宣告みたいなもの(笑) 「Grimselpass」と「Sustenpass」は通行止めで、「Brunigpass」は通行可能ということだ。この時期でも結構通行止めになっている所は多い。

 途中でガソリンを入れたが、イタリアと同じく無人スタンド。クレジットカードも使えるようになっているが、俺のVISAとMasterは使えなかった。ヨーロッパのICカードにしか対応していないみたい。仕方がないのでガソリンを入れに来たおっちゃんに5Fコイン2枚と10F札を交換してもらい(札しか使えない)給油。お釣りが出ると思われる部分があったので安心して給油したが、なんとお釣りは出てこなかった・・・ドイツ語でしか書いてないから分からんちゅうに!結局7F(約500円)程損したことになった。

 昼過ぎ「Engelberg」に無事到着。直線距離で約100kmのところを350km以上も迂回したわけだ。スイスは狭いようで広い。
  まずインフォメーションでスキーが出来ることを確認。Titlis山の標高1,800mを越える部分のゲレンデでスキーが楽しめるそうだ。そうと分かれば宿探し。この町は自然に囲まれたのどかなところなので長期休暇をとろう。

 今日のホテルは「マロ」という和風な名前。レセプションには誰も居らず、書置きと1Fコインが2枚。書置きはドイツ語で書いてあるので意味は良く分からないが、電話番号が書いてありここへ電話して下さいということなのだろう。横にある公衆電話で電話をし、指示に従い自分でチェックイン(カギを勝手に取って行くだけ)。ここでは長く滞在して、スイスの本当の姿を涼すことにしよう。

 飯を食うために中心街(といってもちっぽけなもの)へ。軽く食べた後、再度インフォメーションでトレッキングのルートを聞く。もらった地図に楽しそうなルートを見つけたが、この時期は雪がいっぱいで行けないんだって。まぁ他にもいろいろルートがあるから十分楽しめるだろう。また「ここでは普通何語を話すの?」と聞いたら「スイス ジャーマン」という答えが返ってきた。「ドイツ語?」と再度聞くと「ドイツ語とスイスジャーマンは違うのよ」だって。スーパーで買い物をしても「ダンケ」ではなく「メルシー」なのでフランス語かとも思っていたが、言葉って複雑だよなぁ・・・


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