カブでヨーロッパ一周編

 アンダルシア滞在記 後編 [スペイン] (2001/05/05-05/08)
・05/05 ラリーのスタート地
・05/06 シエラネバダの思い出
・05/07 アルハンブラとフラメンコ
・05/08 Costa del Solを抜けて

通貨単位:Ptas(ペセタ)/100Ptas=約 66.6円


05/05 曇り ラリーのスタート地 Granada/HOSTAL RESIDENCIA Los Girasoles/157.1km

 雲は多いが天気は悪くない。予定通り10時にはコルドバを出発。最近舗装を張り替えた完璧な状態のN432はオリーブ畑の間を通り抜けている。その途中に突然現れる、白い家が立ち並んだBaeneという街に立ち寄ったがなかなか美しかった。画像は街を通り抜けたところ。ヨーロッパでは「ここから市街地」という看板があり、そこをまたぐと両脇に家が立ち並ぶ町の景色になる。町を通り抜けると「市街地はここで終わり」という看板があり、それを超えた瞬間殺風景な景色に変わる。町の中と外の区別が実にはっきりしている。

 ちょっと走っては休憩を繰り返したが、昼の2時過ぎにはグラナダに到着。インフォメーションで売っていた300Ptasのグラナダマップはなかなかよい。迷わず安宿街にもたどり着き、1件目でRJ-11端子の電話付き宿をゲット。シャワー、トイレは別だが値段も2,000円強で有名観光地としては手ごろだろう。

 ちなみにグラナダは歴史的な街で、アルハンブラ宮殿などは世界的にも有名。でもそれより「グラナダ・ダカールラリー(以前パリ・ダカールラリーだったが、最近はグラナダからスタートしていた)」のスタート地であるという事がオレにとっては嬉しい。

 時間も早いので市内をぶらぶらする。アルハンブラ宮殿にも行ったが、なんとチケットが売り切れ。どういう事なのかインフォメーションのおねーさんに聞いたら、入場制限があるから売り切れなんだって。しかも入場料も1,000Ptasとバカ高い。いったい何時に来たら買えるんだと聞くと、朝8:30に来てくれだと・・・8:30っていったら開館の時間やぞ!またBBVAという銀行でチケットを予約できるとも教えてくれた。何で銀行でチケットを販売しているのかは不思議だが、ここでは3泊する予定なので明日銀行へ行って聞いてみることにしよう。

05/06 晴れ/曇り シエラネバダの思い出 Granada/HOSTAL RESIDENCIA Los Girasoles/153.3km

 今日は早起き。朝9:30には出発。昨日聞いた銀行へアルハンブラ宮殿のチケットのことを聞きに行ったが、なぜか閉まっている。朝8:30から営業って書いてるのに。すぐに気付かなかったのが情けないが、今日は日曜日で休みだったのだ。気付いたのはかなり後(笑)

 グラナダから約30km離れたところにある、標高3478mのムルアセン山を擁するシエラネバダ山脈を目指す。実はグラナダに3日も滞在するのはひとつ目的があったから。昨日インフォメーションで「今の時期でもスキーは出来るのか?」と聞いたら「YES」という答えが返ってきたので、スキーをしてやろうと思ったわけだ。

 グラナダを抜けて、BPのガソリンスタンドでガソリンを入れる。これからの山岳ルートに備えてハイオクを給油し、さらにアタックG9というガソリン添加剤を入れる。スタンドで添加剤を入れていると、店の優しそうな兄ちゃんが「何を入れているんだい?」と聞くので「これをいれるとハイパワーになってトルクも上がるんだよ」と説明し、今までの旅やこれから予定の話で店の人たちと30分以上も話し込んでしまった。しかしオレの旅の計画を話すと、誰もがみんな「信じられない!」と呆れるよ(笑)

 スタンドを発ち、どんどん山を登っていく。さすがに標高1,500mを越えるとパワーも出なくなってくる。3速では失速するので、2速40km/h程度で登る。眼前に広がる雪を抱えたシエラネバダに向かってゆく。気温がどんどん下がり、日陰にはまだ雪が残っているSolynieveという町に到着。この町からテレキャビンでゲレンデまで上がるのだが、リフト券売り場もレンタルスキー屋も軒並み閉まっている。そうか、今日は日曜日だからか。景色もいいしなかなかよさげなので、グラナダを出てからここで2泊しスキーを存分に楽しんでやろうと思いたち、宿を予約しておくことにした。ユースを見つけたので聞いてみると「スキーを出来ることは出来るけど、リフトは動いていないよ。スキー場は5月1日付けでシーズンオフに入ったんだ」・・・これでは意味が無いではないか。だから予約するのはやめて、シエラネバダ周辺の散策に切り替えた。

 Solynieveからさらに山岳道路を登り、標高約2,550mまでで道路は終わっている。見よ、この写真を!そこまで登るとこんな状況。周りでは子供達がそりで遊んでいる。幸い道路には雪が無かったので良かったが、道路を外れると雪が積もりまくっている。さすがにここは寒かった。

 結局夕方までシエラネバダ周辺の村々を散策。自然に囲まれたのんびりとしているいところだったよ。

 しかし、スキーが出来なかったのは腹が立つ。やる気満々だったのに。5月末にはスイスにいるはずなので、そこでは絶対スキーをしてやる!

 帰り際、午前中のガソリンスタンドで再度給油。店の人が出迎えてくれて、コーラまでごちそうになった。カブはとてもエコノミーで50ccのやつはガソリン1Lで200kmくらい走るよと教えてあげたのだが、なかなか信じてもらえなかった(笑) でも実際ヨーロッパのような道路だと200km近くいくんじゃないかな。結局ここで2時間以上居座り、おまけに夕食までご一緒させてもらうことになった。晩10:00にスタンドで待ち合わせということなので、一旦宿に戻る。

 10:00ちょっと前にスタンドに到着。「ハモン」を食べさせてくれるらしい。「ハモン」とは何ぞや?右の写真で真中のオレが持っているのがその「ハモン」。この肉を薄く切って食べるのだが、食べてみてようやくなにか分かった。日本でいう「生ハム」である。これがかなりウマイ。パンとチーズと生ハムはゴールデントリオだとオレは信じている。

 おいしい夕食をいただいて、記念撮影。オレの右隣が午前中の兄ちゃん(Miguelさん)で、その下が彼の奥さん。写真左はLoloさん。とても楽しくて陽気な、オレの考える典型的なスペイン人。またその下が彼の奥さん。
 そうそう、Loloさんに日本語では「ロロ」って書くんだよと教えてあげたら大笑いしていた。カタカナとひらがなと漢字の使い分けの話になって説明するのに苦労したよ。日本語の文字の使い分けって普段意識していないぶん、自分自身でもよくわかってないからね(^_^;;

 さらに色々BPグッズ(携帯電話帳、ボールペン、ライター、帽子)をもらったので、お礼(?)としてお手製のBPステッカーをカブに貼った。店の名前とGRANADAの文字が入っているお世辞にもいい出来とは言えないが、想いが詰まっているステッカー・・・こういうもこそ「本当に素晴らしいもの」だとオレは思うよ。困った時にはいつでも連絡してくれよということで、MiguelさんとLoloさんは携帯の番号まで教えてくれた。

 別れ際「俺達はアミーゴだぜ!」と言ってくれた。「アミーゴ」という言葉は日本語や英語に訳した「友達」や「Friends」とは少し意味が違う気がする。確かに間違いではないが、全てを表しているとは思えないのだ。「アミーゴ」・・・

05/07 晴れ アルハンブラとフラメンコ Granada/HOSTAL RESIDENCIA Los Girasoles/33.7km

 今日は朝からアルハンブラ宮殿の見学、のはずが起きたら10時だった(笑) 8時半にチケット売り場に来いって言われてたのに。結局チケット売り場に着いたのは11時半だが、あっさり購入できた。一昨日のおねーさんの話はちょっと大袈裟だったみたい。

 宮殿は13から14世紀に作られたイスラム建築の傑作とされており、敷地はとても広く公園のよう。たくさんの猫がのんびり歩いていて実にほのぼのとしている。しかしこの宮殿には深い歴史が詰まっている。8世紀イスラム教徒はイベリア半島の支配者になった。一方、キリスト教徒は彼らを半島から駆逐しようとレコンキスタ(国土回復戦争)を進めていく。約800年という歳月を費やして、1492年1月2日イベリア半島最後のイスラム教徒のたてこもるアルハンブラ宮殿は無血開城された。コロンブスの新大陸発見とともに、ここからスペインの黄金時代が始まっていった。そういう歴史を考えながら見学すると、どことなく寂しさが感じられた・・・

 宮殿内を見学後はグラナダをカブでさまよう。坂が多く、狭い道で石畳。おまけに一方通行だらけで走りにくいが雰囲気は良い。アルバイシンを呼ばれる旧市街を散策中、絶好のスポットを見つけた。結構有名な場所らしく人がたくさんいたが、そこからの眺めは本当に素晴らしい。アルハンブラ宮殿が見渡せバックには雪の残るシエラネバダ山脈が横たわっている。雲が多く写真ではよく分からないのが残念。

 時間もあったので、また昨日のガソリンスタンドへ。そこで水をもらって久しぶりの洗車。カブが新車に蘇えった(笑) Miguelさんと奥さんはいたが、Loloさんが居なかったのは残念。最後に再びお礼を言って、昨日もらった帽子にサインをしてもらった。名残惜しいが、オレは明日グラナダを離れることにしている。

 夜は、宮殿内で知り合った日本人と日本料理屋へ行き、久しぶりの日本酒と焼き鳥。やっぱり日本酒はうまいなぁ。その後、彼とシェアしているカナダ人2人とともにフラメンコ観賞。情熱的で躍動感があり、体全体で表現している様は見ていてなかなか楽しかった。

 そうだ、これは書いておかねばなるまい。ビルバオ滞在中に「ETA(エータと読む)」の話をしたけど、昨日5/6ビルバオから南東に約300km離れたサラゴサという町でETAのテロリストによって議員が射殺されたらしい。このニュースは昨日Miguelさん達との夕食の時知ったが、ちょっと血の気がひいたよ・・・

05/08 COSTA DEL SOLを抜けて Tabernas/HOSTAL COMPLESO CALATRAVA/220.0km

 朝、荷造りをしようと荷物を確認すると、軍手が片方無い。綿軍手の手のひらと甲の部分に皮がはってある、キャンプとこれからの暑い時の走行に役立つ良品なのに。いくら探しても無いので、どこかに落としたと思っていたら、カブのカゴの中にあった。我ながら呆れるよ。

 天気も良く昼頃グラナダを出発。スペイン南部にはCosta del Sol(太陽の海岸)と呼ばれる、一年中温暖な地域がある。今日の目的地はここでグラナダから結構近い。ここでキャンプでもしようと思っていた。

 いざグラナダを出てシエラネバダのふもとを越え地中海を目指すのだが、強烈な風に見舞われた。しかも向かい風で普段平坦地では80km/hはでるが、今日は全開でも60km/hくらいまでしかでない。道路も山岳コースで苦しい。大型の風防のおかげで、カブのフラフラして怖いこと怖いこと・・・車はそんなに風の影響は受けないから、バンバン抜いていかれる。Costa del Solに出ても風は一向に止まない。一昨日行ったシエラネバダの近くだというのに、とても暑い。風さえ無かったら十分泳げるだろう。でも、こんなに風があったのではキャンプどころでは無いので、仕方なく先に進むことにした。

 現金が底をついて来たので、お金を下ろすべくAdraという町に立ち寄ったが、平日の4時頃だというのに何故かどのATMにも電源が入っていない。1台だけ動いていたが、何故か引き出しできなかった。
 このままでは埒が開かないのでさらに進み、Santa Mariaというイカした名前の小さな町で無事現金を手にした。いったいどうなっていたんだろうね?

 地中海に出てからアリカンテという町までの約400kmはオートビア(高速道路の一種でオートルータとはまた違うもの)を軸にしてつながれているので、一般道のみで行くのは非常に大変だ。しかも、オートビアと一般道の区別をしていない看板がほとんど。オートルータは必ず決まったマークが出ているので間違うことは少ないが、オートビアの場合入る直前まで分からないことが多い。一応、法的には走れるみたいだけど(トラクター、馬、自転車、歩行者は禁止というマークが出ているので大丈夫なんじゃないかな)、もの凄いスピードで抜かれていくので通りたくないのだ。といいつつ、突然オートビアになって少しは走ったけどね(笑)

  しかし今日はアルメリアから50km位先まで来たが、地図を見てここはわかりにくいなぁと思ったところでは確実に迷ったよ。アルメリアの街中でもやはり迷った。看板が絶対的に不足しているのだ。一般道でも主要路線ならしっかり出ているのだが、ちょっとマイナーな路線になるとかなり省かれており苦労する。度々止まってGPSを見ながら地図とニラメッコ。そのとき、モロッコ人という方が大丈夫かい?と声をかけてくれた。彼は今までに中東諸国を3年間かけて歩き倒したそうだ・・・世の中には凄い人も多い。さらに彼は「これでガソリンでも入れなさい」と言って、2,000Ptas札をくれようとしたがさすがに断った。道が分からずにカリカリしていたけど、彼としばらく話をしてとてもリラックス出来たよ。

 あまりに風が強いので、7時頃国道沿いのHostalに不時着。ビールとつまみをたらふく食って今日はおしまい。しかし風は雨よりも辛いかもしれんなぁ・・・


戻る 続く