カブでヨーロッパ一周編

 思い出のポルトガル 前編 [ポルトガル] (2001/04/21-04/24)

・04/21 古きよきヨーロッパ
・04/22 ポルト散策
・04/23 最高のアミーゴ
・04/24 心からありがとう

通貨単位:Esc(エスクード)/100Esc=約48円


04/21 晴れ 古きよきヨーロッパ Porto/Residencial AMERICA/445.8km

 昨日から泊まっていたホテルは結構高地にあるため、出発したのは9時頃だったが霜がおりていた。天気はいいが寒い。コロコロ天気が変わるので、晴れている時に走っておかないと後で雨の中走ることになると思い、今日はひたすら走る。ほとんどが高速区間だったとはいえ、この走行距離は脅威的だ。その結果ついにポルトガル北部のポルトまでやってきた。

 スペインとポルトガルの国境は、フランスとスペインのそれに比べると驚きだった。高速区間から峠道に入り、しばらく行った所にある小さな橋が2国の国境。しかし、10年以上前に閉鎖したと思われる国境管理施設や両替所跡があるだけ。もちろん人なんて誰もいない。まさに朽ち果てた廃屋。大きな看板があるから国境とわかるものの、無ければただの橋だ。

 国境で両替をしようと思っていた足元をすくわれた。現金を持たぬまま高速区間に入る。ガソリン残量を気にしながら高速を降りBragancaの街へ入る。結構大きそうな街なので銀行があるはずだ。案内に従い街の中心部にやってくると銀行を発見。土曜日だからか銀行は閉まっていたが、ATMさえあれば問題無し。もちろん銀行の横にはATMがある。CirrusとPLUSのマークもあるのでカードを入れてへんなキャラクター(カード君と命名。キャラクターが出てくるのはポルトガルだけか?)の指示に従い英語表示を選択。暗証番号を入力後、現金引き出しを選び、金額を入力・・・現金が出てくると思いきや「この機械ではあなたのカードは使えません」とカード君が困り顔に。なんでやねん!2枚持っているカードどちらでも引き出せなかった。困ったなぁと思っていると、通りがかった人が「そこにインフォメーションに繋がる電話があるよ」と親切に言ってくれ「両替をしたい」と言うと「両替所はあそこだよ」とそこまで親切に連れて行ってくれた。彼はルーマニア人ということだが、どう見ても旅行者ではなかった。多分この街で働いているのだろう。両替所のレートは良くないがこの際仕方が無いので、手持ちのUS$の一部をEsc(エスクード)へ。これでガソリンを入れられる。

 そうとわかれば、街をカブでブラブラ。石畳の道を走りしばらく楽しむ。ポルトガルの街は石畳の道が多い。右の画像はポルトの路地だが、大体こんな感じ。カタカタと音がして楽しいが、雨が降ると滑るし、振動も激しい。

 その後また高速区間に入る。ポルトガル人の運転マナーはフランス・スペインに比べるとかなり悪い。車線はみ出しは当たり前、追い越し禁止区間なんて無視・・・。さらに道路の舗装も荒れている。「田舎」ってことなのかな。パーキングも非常に少ないし、ガソリンスタンドも高速区間には無く、一旦降りて街まで行かないといけない。面倒くさいぞ。

 その後も延々と走りパーキング(約200km弱走ったが1ヶ所しかなかった)で会ったおじさんにコーヒーをおごってもらった。優しい人もいるもんだ。彼はここから30kmくらいのVila Realまで行くとのこと。Portoまで行くと言うと、山を越えて行くのはしんどいだろうけど、頑張れよと励ましてくれた。

 一般道の高速区間がオートルートに変わる少し手前で降りてポルトガルの田舎を散策。舗装している林道という表現がふさわしい道で山を下りる。村を通り過ぎる時は多くの人が珍しそうにこちらを見てくる。子供達の中には手を振ってくれる子も。こういうのもとても楽しい。その途中で親子に道を聞いたら、親切に距離と所要時間まで教えてくれた。そんな林道を降りAmaranteの街にあるガソリンスタンドへ。ここのスタンドでも店員が集まってきていろいろと話をした。こういうのがオレがポルトガルに惹かれる理由かもしれない。古きよきヨーロッパに生きる人々という気がするんだよ。

 それからは一般道。スペインとは一時間の時差があるということも手伝い、午後6時頃ポルトに到着。中心地まで来るのに少し迷いはしたが、駐車場付きの宿にチェックイン。さすがに2日連続の長距離走行は疲れた。疲れはピークに達していたが、腹の減りもピーク。近くのレストランで白身魚のムニエルとポートワイン。これは絶品だった。宿へ戻って来るなり眠ってしまった。

04/22 雨 ポルト散策 Porto/Residencial AMERICA/0.1km

 昨日は快晴で、ポルトガル入国後は暑いくらいだったのに今日は雨。この天気には今後も悩まされそうだ。

 今日は日曜日。ガソリンスタンドも閉まっていることがあるので、ポルトを散策。疲れも溜まっていたからちょうどいいだろう。日曜日は多くの店が閉まっているが、市が開かれる。近くで動物市をやっていた。動物を眺めた後、街を見下ろせる塔があるクレリゴス教会へ。ちょうど昼休みなのか14:30以降にまた来てと言われた。時間を潰すためドウロ川へ。雨の中、投げ釣りでセイゴを釣っているおじさんに話し掛けた。20cm位のものだが、なかなかおいしいとのこと。名前を教えてくれたが、とても難しかったのですぐ忘れた。結構釣れるみたいで、一本の竿に釣れている時にもう一本の竿に魚がかかった。「あげてくれよ」というので釣らせてもらった。釣りは楽しい。本気で釣り道具を買おうかと思ってしまったよ。おじさんに「カブでヨーロッパを一周するんだ!」と言うと、笑いながら「君はクレイジーなのかい?」というので「そうさ!オレはクレイジーだよ!」と2人で大笑い。そんな楽しい一時を過ごし、おじさんは「寒いからもう帰るよ」と握手をし別れる。

 その後、少年少女の団体(ボーイ・ガールスカウトっぽかった)の団体と出くわし、賑やかな中で時間を潰す。昼飯を食べた後再び塔へ。225段の階段を上り78mの高さの塔からポルトの街を一望。360度広がるパノラマは晴れていたら最高だろうな。

 その後も雨は止まず、夕方宿へ戻る。チェーンの初期伸びが出てきたので、チェーンの調整。駐車場は地下にあるため、雨でも平気だ。いくらカブとはいえちゃんとメンテナンスしてやらないと後で大変なことになるだろう。雨が降ってもこういう所は気を抜けない。ついでにZippoもメンテナンス。

 明日は晴れればいいが、どうなることやら。晴れならコインブラへ。雨ならポルトで滞在。なかなか楽しい街なのでもう一泊くらいしてもいいかな。

04/23 曇り/雨 最高のアミーゴ Porto/Residencial AMERICA/0km

 今日も朝から曇天。小雨が降っていたのでもう一泊することにした。もっとポルトを見ていけってことなのかな。

 ポルトといえばポートワイン。ドウロ川沿いに密集するワイン工場の見学へ。それよりもオレは船、特に帆船が大好きなので、そこへ行く途中にあったインフォメーションで「船の博物館は無いのか?」と聞いた。これが全ての始まりだった・・・

 ワイン工場では、係員の人の詳しい説明付きで見学できる。ブドウの生産地から、醗酵、保存樽、ポートワインの区分などを英語で説明してくれたのでとても勉強になったぞ。最後にはテイスティング。おいしいワインを飲ませてくれるので、ワイン好きにはたまらないだろう。そんな工場をハシゴして、ほろ酔い気分で「船の博物館」へ向かう。

 しかし、インフォメーションでは「舟の模型がある」ということで「博物館」とは一言も言っていない。その証拠に教えてもらった場所は細い路地が入り組んだところで、博物館があるような場所ではない。路地の名前を確認しながらそこにたどり着いた。

  見たところこじんまりした「模型舟工房」。入り口から中を見ると、手招きして「入っておいで」と言うので中に入る。「君は舟が好きかい?」と一言。「大好きです!」と言うと、微笑んでくれた。中には工具や材木とともにたくさんの模型が所狭しと並べられいる。ドウロ川沿いで見たワインを運ぶ帆船の模型があったので「ポートワインを運ぶ船ですね」と言うと「ポートワインは好きかい?」「好きです」「じゃあ飲もう。今日は仕事はしないんだ(笑)」ということでワインまでごちそうになった。日本では「乾杯」と言うんだと話すとみんなで「乾杯」という掛け声をかけた。その時中にいた人はみんな「ファミリア(家族)」らしい。Jose Fernandoさん(通称Nana:写真左)とその2人の息子さん。さらに弟のLanoさん(写真左から2番目)。息子さんの1人のBrunoさん(写真右から2番目)は少し英語が話せ、並べられた模型についてや、今までの作品を収めたアルバムを出してきて、色々と説明してくれた。模型だけでなく本物も小型船の作ったことがあるらしい。また、Nanaさんは12歳のころから模型作りを始め、独学でその技術を習得したらしい(現在55歳)。本当に凄い人だ。多分ポルトガルでは模型師として有名な人なのだろう。その後も何人も工房にやって来て、さらに別のワインを飲みながらみんなでわいわい。Nanaさんは「ここに集まる人はみんなアミーゴなんだ」と言っていた。

 カブでヨーロッパを一周するんだという話をすると、なんとNanaさんとBrunoさんは大のバイク好き。Nanaさんは19年前のホンダ400Nを今でも大事に持っておられ、倉庫を開けて見せてくれた。綺麗に整備されており、とてもそんな昔のバイクとは思えない程。Brunoさん至っては、ビッグバイク(HONDA CBR1100)に乗っていて、体中に傷跡だらけ・・・その後もバイクの話、舟の話と盛り上がり、結局閉める6時半頃まで3時間近くそこにいた。「ポルトガルはヨーロッパの端っこの小さい国だけど、人々の心はとても大きいんだよ」というのが印象的だった、帰り際「今日から君もアミーゴだ!また必ずポルトに来て、ここへ来いよ」と言ってくれた。

 それからNanaさんの弟のLanoさんとカフェへ行き「時間があるなら家においで」ということでお邪魔することになった。家の隣にあるLanoさんの工房にも舟の模型があり、兄弟で同じ仕事をしているようだ。Lanoさんには3人の息子さんと1人の娘さんがいて、さらにLanoさんの従兄弟まで来て、突然やってきたジャポネスに嫌な顔ひとつせず、みんなでわいわい夕食を食べた。息子さんと娘さんは英語が話せたので、色々と詳しい話ができた。食事はポルトガルの家庭料理というやつで、とてもおいしかったぞ。ここでもポートワインをご馳走になった。「自分の家にいると思いなさいよ」とまで言ってくれ、ちょっとしたホームステイ気分。食後はカフェへ行ってコーヒーを飲む。ポルトガルの習慣なのかな?夜も遅くなってきたので、宿へ帰ることに。お母さんが「またこの家に戻ってきなさいよ。」と言ってくれたのでとても嬉しかった。見ず知らずの日本人にこんなに親切にしてくれるなんて、本当にポルトガル人の心は大きいと思う。日本じゃなかなか考えられないことだ。宿まで結構遠いにもかかわらず、親切にも歩いて送ってくれた。「アミーゴ」「アミーゴ」と何度も言ってくれ、本当に嬉しかった。オレはポルトで「最高のアミーゴ」に出逢った・・・

04/24 雨|曇り 心からありがとう Porto/Residencial AMERICA/0km

 こう毎日雨では話しにならないが、これが現実。ポルトでもう一泊することになった。明日は雨が降っても次の目的地「コインブラ」目指そう。

 だらだらしていたので昼過ぎから行動開始。地図によると軍の博物館があるので、帆船模型を求めてそこへ向かう。ポルトはリスボンとともに坂が多い。下りならいいが上りは一苦労。軍の博物館はかなり充実した展示だったが、残念ながら帆船模型は2点のみ。

 その後、また昨日の模型舟工房へ。今日は昨日と違い実際に作業をしていた。にこやかに出迎えてくれ、作業を見せてもらった。帆船のマストを作りの最中で、もちろん全て手作業。材木からマストが出来上がっていく様子は見ていて飽きない。結局また閉めるまで、3時間以上居てしまった。それからカフェ(バー)へ連れて行ってもらう。そこは家族の行きつけの店らしく、2人の息子さんが次々にやってきて、また盛り上がった。その後夕食を食べようと、小洒落た海鮮レストランへ。魚肉のフライ、ムール貝、アジの揚げ物・・・ここも行きつけの店で、親切な店員さんは英語でいろいろと説明してくれた。港町の魚介類は最高においしい。毎日こんなに食べてたら太りそうだ(笑) その後、さらに別のカフェへ。

 とても親切な彼ら一家をオレは絶対に忘れないだろう。別れ際に必ずまた会う事を約束した。「アディオス、アミーゴ!」という言葉とともに、ライトアップされたカテドラルを背にし帰路についた。「心からありがとう」と思った。日本にいる時「心からありがとう」と思うことなんて滅多になかった気がするけど、このポルトでは何度そう思ったか分からない。ポルトは最高の街だ・・・いつになるかは分からないが、必ず再びここを訪れるだろう。


戻る 続く