カブでヨーロッパ一周編

 ファイナルランも一苦労 [フランス] (2001/11/20-11/23)

・11/20 イングランド脱出!
・11/21 強風でピットイン
・11/22 暴風を避けるには?
・11/23 感動のゴール!

通貨単位:FF(フランスフラン)/1FF=約17円


11/20 晴れ/曇り イングランド脱出! Calais/SOCIETE HOTELIERE DE CALAIS(BONSAI HOTELS)/129.2km

 7時半起床のつもりだったが、マヌケなことに目覚ましをセットし忘れていて、昨夜遅くまでゲームを楽しんでいたことも手伝い、起きたらすでに9時半だった・・・10時出発の予定が12時半。骨折した親指の添え木を外し、グローブをは着けるが痛みは無い。グリップも普通に握れるので問題は無い。実くんが見送ってくれる中、長く滞在したロンドンを出発した。

 ロンドンにはカブが走っているという話を書いたが、そのカブでヨーロッパを一周する奴は皆無だろう。渋滞の時横に止まったタクシーの兄ちゃんが「もしかして日本から来たのか?」と声を掛けてきた。手短に今までの旅を言うと、驚きを通り越し呆れて笑い出した。「Good luck!」という言葉で別れたが、タクシーの乗客(多分日本人)にも笑われてしまった(笑)

 フェリーが発着するドーバーまで120km弱だが、乗り場に着いた時には4時15分前。冬時間になってからというもの日没が早く、5時にはもう「夜」という表現がふさわしい。3時半頃に「夕方」って感じなので困ってしまうよ・・・

 ドーバーからフランスのカレーへは数社のフェリーがひっきりなしに航行している。まさに選り取り見取り。その中でオレが選んだのは「SEA FRANCE」という会社。理由はチケット売り場の入口から一番近かったというだけなんだけどね(^_^;;

 フェリーの乗客のほとんどは長距離トラックの運ちゃん。観光客の姿はちらほら。船内には免税店やレストランもあり、ラトヴィアからドイツに渡った船よりもよっぽど豪華だった。フェリーのチケットを買ったので残金は約5£。パスタとコーラでほぼ使い切ることができた。暇つぶしに免税店の方も覗いてみると、なんとあの「KNOCKANDO」があるではないか!ロンドンで25£位だったが、免税店では25£・・・って何で免税で同じ価格やねん!と思いつつも誘惑には勝てずカードで買ってしまった(笑)

 カレーに着いた時にはもう真っ暗。もちろんパスポートチェックも無しにフランスに入国。右側通行になったのでなんだかほっとしてしまった。とはいえ夜間走るのは危険が伴うので、カレーのモーテルに宿泊することにした。その名も「ボンサイホテル」。ロゴはご丁寧にもセンスに盆栽が書かれている純和風。中身は全く盆栽とは無関係だが、値段もまぁまぁだったので名前で妥協してしまった。明日中にパリ入りする予定なので、いい天気を祈ることにしよう。

11/21 曇り 強風でピットイン Saint-Omer/Hotel Les Frangins/62.7km

 9時起床で身支度をし、駅の公衆電話でメールをチェック。イギリスの公衆電話は形状が悪くカプラー通信が出来なかったが、フランスは余裕でできる。ふと駅の時計を見ると11時だが、オレの時計は10時を指している・・・いつものことながら1時間の時差があるのをすっかり忘れていた(^_^;;

 12時にチェックアウトし出発するものの、カレーから国道に出るのに道に迷った。さらに悪いことに一番厄介なものに行く手を阻まれることになった。ノルウェーで散々苦労した「」である。車や大きなバイクならそれ程の問題ではないかもしれないが、カブにとっては大きな脅威となる。かなりの強風なので走行中車体が流される。そのすぐ横を車が追い越していくので、怖いことこの上ない。さらにフランスの地形はどこまでも平坦なので風がそのまま吹き付けてくる。Emmanuelに今日の夜6時頃パリ入りすると伝えていたが、この状態で走るのは危険と判断し、出発後すぐにピットインすることに決めた。

 まずEmmanuelに電話をし事情を説明。この風が明日止むという確証はどこにもないので、パリへは来週の月曜日の昼に行くことになった。遅くとも日曜日にはパリの近くまで行くようにしよう。4日あれば風が無い日もあるだろうと思う(望む)しね。

 早々と宿を決めたが、時間が2時過ぎという最悪な時間だった。どういうことかといえば、フランスにおいて昼飯の時間は午後2時までと決まっている。レストランはもちろん2時がオーダーストップ。ファーストフードの店も無いような町なので仕方なくパンを買ってきて昼食にした。強風時の走行は精神的に非常に疲れるのが理由だったのか、パンを食べた後すぐウトウトと昼寝をしてしまった。

 夕食はもちろん食い逃すことなく、今日はフランスということでワイン。でも控えめにグラス2杯にとどめておいた。酒のことをよく書くけど、酒ばっかり飲んでいるわけではないぞ(笑)

11/22 雨|晴れ 暴風を避けるには? Saint-Omer/Hotel Les Frangins/0km

 昨夜は非常に苦しかった。昼寝をしたからか寝付けたのは朝4時を過ぎてからだった。それだけなら別に苦しくもないんだけど、久々に「金縛り」ってヤツを味わってしまった(^_^;;
 かなり厳しく、
意識はあるが身体が動かないのだ。説明しにくいので実際に遭わないと分からないんだよなぁ・・・

 それでも8時半に目が覚めた。窓の外を眺めると、昨日に増して風がふいている。おまけに雨まで。インターネットでフランスの天気予報をチェックしてみたら、海沿いでは風速50から60km/hの暴風だそうだ・・・ご丁寧に赤で表示してくれている。ノルウェーで学習した結果、こんな状況で出発するほどアホではなくなったので素直に連泊することにした。この風がいつ止むか分からないという一抹の不安は残るが、実は1つ秘策があったのだ・・・

 その前にカブを送り返す日を変更すべく日本通運パリ支社に電話をかけ、27日火曜日ということにした。「追億編」に必要の無い荷物は全て送り返すので、荷造りも半日あれば大丈夫だろう。

 それでは本題の「暴風を避ける秘策」について書くことにしよう。フランスの国鉄「SNCF」にはなかなか使えるサービスがある。以前アンドラへ行った時に気が付いたのだが、列車に車やバイクを載せてくれる路線があるのだ!そいつを使えば暴風でも問題なくパリへ戻れるハズ。ということで、早速駅へ行って調べることにした。

 ご存知の通りフランス人の多くは全くと言っていい程英語を解さない。もちろん駅員が解すはずもなく、戦いの幕が開けた。オレが聞きたいのは、この駅(Saint-Omer)からカブを載せて列車でパリへ行けるのかどうか?もしそれが無理なら何処の駅からなら行くことができるのか?という2点。時間や料金も知っておきたかった。

 絵に描いて身振り手振りで伝えるが、なかなか伝わらない。当たり前だが、イギリスならこんな苦労をしなくて済む。でも結構熱くなれるから、こういうのもちょっと好きだったりする(笑) 長時間に渡る苦労の末(本当に苦労した)、なんとか聞き出すことに成功した。

 ここからなら無理だが、約20km離れた「Seclin」という町から「ニース(Nice)」行きの列車が出ているそうだ。ニースからはパリ行きの列車が出ているらしい。いずれも夜行列車だが、今夜乗れば明後日土曜日の朝にパリに着ける計算になる。しかし、ニースっていうとフランス・イタリア国境近くの地中海沿いの町なので、フランスの南の端っこだ。ここから道路を使うとパリまで約300kmなのに、列車なら2,000km以上移動することになる。値段もバカにならない。風が止むのに賭けるか、列車で行くか・・時間もまだあることだから、一度宿に戻って考えることにした。

 宿で地図を見て「Seclin」という聞きなれない名前の町を探してみる。約20kmと聞いていたので近くを探していたが、「リール(Lille)」のすぐ近くだった。これではなかなか見つかるはずも無い。ここからの距離はざっと見積もって80km。どこがどう間違って20kmになったのかは謎だが、この暴風時に80kmも走るのは馬鹿げている。そんなわけで無駄な時間を過ごしたことになった。

 インターネットで天気予報をチェックした限り、明日は風が弱くなるとのことだ。内陸部に入ればさらに弱くなるとようので、その予報に賭けてみるしかない。頼むから、強風だけはやめてくれよ・・・

11/23 晴れ|曇り 感動のゴール! Paris/HOTEL PRINTANIA MAILLOT/259.5km

 タイトルの通り、とうとうゴールであるパリへ到着した!天気予報通りで風も弱まり、嬉しいことに風向きも変わった。昨日までは横風だったのに、今日は一変して追い風に。10時半に「Saint-Ome」を発ち、約250kmの最後の長距離走行をおおむね6時間で走り終えた。

 パリから北へ約50kmの「Senlis」という町に入った時、「Parisまで何km」という看板が出現。その時に、今までの記憶が頭の中を駆け巡った気がした。とうとう戻ってきたのだ・・・

 そのまま「N17(国道17号線)」を疾走し、一本道なので迷うことも無くパリへ入った。「N17」はパリに入りまもなく「N2」に名前が変わる。この「N2」は見覚えのある道路だ。ヨーロッパで初めてカブにまたがり、日本通運の倉庫からパリへやって来た時の道路。その時は慣れない右側通行にギクシャクしていたなぁ・・・なんて思い出も蘇ってきた。前回はそのまま市内に突入したが、今回は外周道路で凱旋門方面へ向う。というのも、荷物を預かってもらっているReynaud邸は凱旋門方面からなら行きやすいからで、今日の宿もその周辺にとることにしたのだ。今になってようやく、パリの地理も分かるようになってきたよ。

 パリは相変わらず多くの車が走り、クラクションの音が響き渡っている。中心街はもちろん外周道路も渋滞しているが、その渋滞さえも懐かしく感じてしまった。とうとうパリへ戻ってきた。本日11月23日、約7ヶ月の約20,000kmに及ぶ旅は無事にエンディングを迎えることが出来た・・・つづく


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