カブでヨーロッパ一周編
鉱物と共に 後編 [スウェーデン] (2001/08/25-08/28) ・08/25 親切な町
・08/26 憧れの地「バストネス」
・08/27 一風変わったユース
・08/28 ブルーベリー食いまくり通貨単位:SEK(スウェーデンクローネ)/1SEK=約13.5円
08/25 晴れ/曇り/雨/霧 親切な町 Riddarhyttan/TALLGARDEN(ユース)/260.8km
11時にユースを発ち、今日は1日変わった天気の中を走った。晴れていたと思ったら、曇り出して、突然雨まで降り出したと思ったら、急に止んで霧が出たり・・・よーわからん。
今日の目的地「Riddarhyttan」もこれまた小さな町。もちろんここでも鉱物を採集するつもりだが、今回はちょっとした思い入れがある。オレは大学で「バストネス石」という名前のついた鉱物を研究中なのだが、その「バストネス石」が世界で最初に見出された場所がこの近くにある「バストネス」なのだ。「Type Locality(原産地)」と呼ばれ、研究に携わっている者としては、一度は訪れてみたいところで、いわば憧れの地。
距離もそれほど無く、昼4時頃「Riddarhyttan」に到着。ミシュラン150万分の1の地図(スカンジナビア版で普段これを使っている)には名前すら出てこない町なのでユースは期待していなかったが、都合よくユースがあった。普通、ユースはまず申し込み書を書かされ「前金」が原則なのだが、ここは申し込み書さえ書かなかった。忘れているのかと思い「書かなくていいのか?」と尋ねたが「ノープロブレム」らしい。もちろん金も払ってない。部屋は広くてきれいし、もちろんキッチンもある。さらに客はオレ1人。こんな町(というより村)だからそれも納得できる。
実は、ここの町はちょっと面白い。観光業で「村おこし」をしようとみんなが頑張っているのか、観光客であるオレには誰もが親切。まずユースを管理している併設のレストランのマスター。オレが「バストネスへ行きたいんだ」と言ったら、「知らないなぁ」と言いながらも奥さんや他の客に聞いて何とか場所を調べようとしてくれた。それだけでなく「鉱山へ行きたいのだったら、管理している人に連絡してあげよう。多分ゲートを開けてくれて中に入れると思うよ」という話にもなった。地図を探しにツーリストインフォメーション(とマスターが言っていたが普通の喫茶店。「i」のマークも無かった)へ行った時には、売り物の地図は無かったが、店の地図を見せてくれて行き方を細かく教えてくれた(これは普通か)。さらに地図を売ってるかもしれないと思いスーパーへ行ったら、客の1人(キャンプ場の人だった)が「地図だったらウチで売ってるよ」と言ってキャンプ場まで連れて行ってくれた。さらにキャンプ場ではこの近辺で地質学的に楽しいところを色々教えてくれ、売り物の観光ガイドの冊子をタダでくれたり・・・でも正直言わせてもらうと、観光業で人が集まる程の場所はないんだよね(^_^;;
地図を手に入れた後は、例のドイツ語のガイドブックの地図(略しまくって書いているのでよくわからない)と照らし合わせ場所を確認。さらにPeterから書いてもらった手書きの地図で細かい位置を把握。日も高いので休むことなく出発!
購入した5万分の1の地図のおかげで、迷うことなく憧れの地「バストネス」に無事到着!!ここについては明日書くことにしよう。
08/26 曇り|雨 憧れの地「バストネス」 Riddarhyttan/TALLGARDEN(ユース)/24.9km
昨夜は読めないドイツ語の文献を読み(?)、インフォメーションで貰った資料に目を通し、パソコンに入っている鉱物事典を眺めているたので寝たのは2時過ぎ。もちろん起きたのは昼。今夜は自炊する予定なのでまずスーパーで買い物。昼飯は併設のレストランで「ケバブ」(日本じゃあまり一般的じゃないけど、トルコの食べ物で出稼ぎ労働者の多いヨーロッパではよく見かける。フライドポテトかパンと肉と生の青唐辛子がセットになったもで、一種のファーストフード。味はまずまず)を食べた。にしてもポテトが多すぎる。大皿に山盛りも食えるかっちゅうに!
オーナーは相変わらずの感じで、開口一番「オー、マイフレンド」だって。また彼から、昨日言っていた通り鉱山の管理者に連絡してもらえることになった。これは楽しみ(^_^
昼食の後はもちろん「バストネス」へ。写真のようなズリから鉱物を探すのだが、正直言うとよくわからない・・・珍しい鉱物があるには違いないが、あまりにマイナーな鉱物が多く知識不足のオレには辛い。それでもとりあえず採集はしてみた(笑)
採集以外にも森の中の散歩も楽しんだ。森の中は静まり返っていて、精霊でも住んでそうな雰囲気だった。
夕方頃にはユースへ戻り部屋で休んでいると、ドアをノックする音が。音の主はマスターだった。「鉱山を管理している人と連絡が取れたから今から会いに行こう」ということで、彼のクルマに乗せられ隣の村へ。が、マスターは彼の家を知らなかった。民家が数件しか無い村なので、誰かに聞けば知ってるだろうと高をくくっていたのだが、奇妙なことに村には誰ひとりと居なかった。少なくとも管理している人は家に居るはずなのに・・・「おかしいなぁ、どないなってるんやろう?」と言いつつ、時間を置いてまた来てみようということでユースに戻った。
部屋に入り10分程経っただろうか。またもやドアをノックする音。今度は知らないおじいさんだった。おじいさん曰く「その人の家を知ってるから、今から連れて行ってあげるよ」ということで今度はおじいさんの車に乗りこむ。結局、管理している人の家はさっきの村の中にはなく、少し離れたところにある集落にあった。住所はその村の名前になるようだけど、これでは見つかるまい。そうしてオレは管理者だというおじいさんに無事会うことが出来た。
オレは明日鉱山を案内してもらおうと思っていたのだが、トントン拍子に今から連れて行ってもらうことになった。今度は管理者のおじいさんのクルマ(粋なことに新型ビートル)に乗り、一旦ユースへ。身支度をしておじいさんと共に「バストネス」へ向かう。俗に「バストネス」と呼ばれている鉱山は「旧バストネス」と「新バストネス」と2つある。「旧バストネス」の方は水がたまっていて、落盤の危険が高く立ち入ることが出来ない。「新バストネス」の坑道は整備されているのでこちらへ入る。坑道入口近くの倉庫で長靴、作業着、ヘルメットなどを借りる。ここはたまに一般人を入れることもあるらしく、多くのヘルメットがあった。坑道についての説明をしてくれ、オレは研究者だということで、一般人は立ち入れない区域も案内してもらえることになった。右写真は鉱山の入口前に立つおじいさん。画像がちょっと白っぽいのは霧が出ていたからで、雰囲気がわかるように補正はしていない。
このおじいさんの英語はとても聞き取りやすい。もしやと思っていたら、やはりスウェーデン人ではなくアメリカ人だった。そりゃ聞き取りやすい訳だ。スウェーデン人の英語もかなり聞き取りやすいけど、英語圏の人はやっぱり聞き取りやすいな。
ここの坑道内部は先日の「Varutrask Mineral Park」と違い照明は全く無く、手に持った懐中電灯の光だけが頼り。一般人立入禁止の区域になると、足元はぬかるんでいて水がたまっている。左写真は、完全に立入禁止の区域。落盤しないように支えている木の柱が腐りきっていて崩れている。
またサンプルを採ってもいいという事だったが、暗い中で多くは泥まみれだったり、錆びていたり(石自体が鉄を多く含んでいるので赤く錆びている)でよくわからなかった・・・しかし、ここまで来て採集しないのは惜しいので、ちょっとだけ(数キロ程)採って帰ってきた。知っている人はまず居ないと思うが「wroewolfeite」らしき鉱物をゲットした!ちょっと嬉しかったりする(^_^
坑道から出てきた後も、おじいさんの親切はとどまらず、オレが行ったズリの場所でCe(セリウム)鉱物がある場所やその特徴を教えてくれたり、他のズリの場所、「旧バストネス」の入り口、さらに勝手に入ってもいい(オレだからかな?もちろんヘルメット着用)坑道の場所などなど。もちろんこれらの鉱山の沿革なんかも教えてもらった。帰りはユースまで送ってくれ、「明日坑道へ行くんだったらこのヘルメットを貸しておいてあげるよ。ここを去る時にレストランに預けておいてくれたらそれでいいから」と言ってヘルメットまで貸してくれた。それにしても、この町は本当に親切な人が多い。鉱山以外の見所は無いかもしれないけど、人々の親切さはそれ以上の魅力だと思うな。
ユースについてからは疲れていたが夕食作り。ビーフシチューを作ったのだが、めちゃめちゃ具だくさんになってしまい、5皿分のルーを使ったのに軽く8皿分は出来上がってしまった(笑)
まぁ余った分は明日食べれば食費が浮くからいいか。ちなみに今日の宿泊客もオレ1人だよ。08/27 雨|曇り|雨 一風変わったユース Riddarhyttan/TALLGARDEN(ユース)/26.9km
2日前から宿泊しているこのユースはちょっと変わっている。というのも定休日があるのだ(笑)
不定期みたいだけど、今日がその日。レストランが閉まっているのでチェックインはもちろん出来ない。 この日に客が来たらどうするんだ?というよりどうにもならないよ。宿泊中のオレはそのまま滞在しているので特に問題は無いんだけどね。滅多に客は来なさそうだからそれでもいいのだろうか。昨夜も遅かったが9時頃目が覚めた。外を見ると雨が降っていたので二度寝。こんなところで雨に降られたら、何にもすることが無いんだよね・・・昼頃再び起きると雨が止んでいたので、昨日のおじいさんに教えてもらった坑道に入ってみたり、ズリを散策したり。林道走行も楽しんだよ。
そんな大したことはしていないのだが、何故か疲れてしまった1日だった。
08/28 雨|曇り ブルーベリー食いまくり Riddarhyttan/TALLGARDEN(ユース)/28.2km
昨日、ここのユースは変わっていると書いたが、やはり変わっている。定休日は不定期だと書いたが実はそうではなく、毎週月曜日は休みだと発覚した。しかも今日火曜日に至っては営業時間が11時から15時というふざけよう(笑)
たぶんユースで儲けようなんて気はさらさらないのだろうな。そういえば昨日公衆電話でメールをチェックしたのだが、面白いメールが来ていた。フィンランドのイナリで出会ったポルトガル人パッカーからなんだけど、彼がロバニエミのユースでオレと同室だったフランス人パッカーと会ったそうだ。「信じられないだろうけど、世界って狭いねー」という内容だった。でもオレはもう驚かないぞ!世界は本当に狭いのだ(笑)
オレが思うに、他にもオレと出会った人同士が会っているに違いない。オレを含めて、安宿に泊まる奴はどこへ行っても安宿に泊まるので、鉢合わせることもあるだろう。「見たことも無い小さなバイクに乗った日本人」といったパッカーの中でも特異な存在で目立ちまくっているから、話題に出ることも多いのだろう。大幅に旅程が遅れているので、今日はここを発ち「ストックホルム」へ向かうつもりをしていたがあいにくの雨。霧雨といった表現がしっくりくる大した雨ではないが、連泊することにした。
昼過ぎに町のスーパーの中にある郵便局へ採集した鉱物を持って行ったら「郵便業務は15時から17時なんでまた後で来てね」と断られた。えらいピンスポットな郵便局やなぁ、と思ったがどうしようもないのでユースへ戻ってきた。特にすることも無いので久しぶりに昼寝してみた。15時に起きるつもりが、心地よいので30分送れてに目が覚めた。もう一度スーパーへ行くと今度は「ここから小包の発送は出来ない」と言われた。そんな郵便局あんのかい!とも思ったが、「12km離れたちょっと大きな町の郵便局からなら送れる」と言うのでカブで走る。幸い雨は止んでいたが道中で降りやがった。その町の郵便局で箱を買いその場で梱包。「Fragile.(日本でいう「ワレモノ注意」のことね)」と書いたのだが(いつも書いている)、「それは出来ない」と断られた。意味不明で理由を聞いても「わからない」とのたまうのでそのまま発送。まぁ今回の鉱物は特に壊れやすいものでもないので問題ないだろう。
その後ガソリンを給油。店のおばちゃんは珍しがって、旅について色々と聞かれた。まぁこんなことは良くあるんだけど。給油後は、鉱物採集用のビニール袋がほとんど無くなっていたのでスーパー「ICA」で新しいものを購入。そう、つまりストックホルムでも採集するのである。
ユースに戻った後は、ブルーベリー狩り。ユースの裏には野生のブルーベリーが茂っており採り放題!右写真の小さな青く丸っこいのがブルーベリー。こんなのが一面に広がっている。あまりにたくさんあるので、ついつい採り過ぎてしまった(^_^;;
マウスカーソルを右写真の上へ持っていってみよう。これが本日の成果・・・ちょっとやり過ぎたな(笑)
夕食後に大きなスプーンでバクバク食いまくったが、これだけ食うとさすがに味も落ちてくる。何事も程々がいいものだと痛感した(笑)