カブでヨーロッパ一周編
太陽に選ばれた場所 北極圏 南下編 [ノルウェー・フィンランド] (2001/08/07-08/12) ・08/07 選択ミス
・08/08 進路を南に
・08/09 イナリという所
・08/10 世界は狭い
・08/11 なかなか進まない
・08/12 北極圏脱出!通貨単位:NOK(ノルウェークローネ)/1NOK=約13.6円 FIM(フィンランドマルッカ)/1FIM=約19.55円
08/07 晴れ/曇り 選択ミス Ifjord/NILSEN'S GJESTGIVERI(キャンプ場)/118.5km
起きたのは10時。天気予報どおりのいい天気なので、今日ここを発つことにした。コロコロ天気が変わるので今を逃すと何時になるかわからないしね。
おもいっきり汚れていたオイルを交換した後、昼2時半に出発。お父さんはいなかったが、お母さんとSveinさん、そして子供達が見送ってくれた。
2時半に出発したのには理由があって、来た道を引き返すのでは無くて、「Honningsvag」からフェリーでフィヨルドを渡り「Kjollefjord」から南下するルートを取る為だ。嵐に遭った「あの」道を引き返すという恐怖感もあったが、それよりも途中に長い長いトンネルがあるのが嫌だから。通行料も高いし、海の底のトンネルなので登りはカブにはきつい。それならのんびりフェリーを使った方が得策と踏んだ・・・が、これが失敗だった。
フェリーは1時間程と思っていたが、なんと2時間半もかかった。おかげで「Kjollefjord」に着いたのは午後6時。さらに3桁台の国道なので路面状態が悪い。至るところ工事中で舗装されていない部分も多い。「振り分け」出来ない「振り分けバッグ」では、荷物を全て工具を入れている銀行ボックスの上に積むしかない。その為重心が高くなり必然的に不安定になる。この状態で未舗装はかなりキツイ。さらに、ガソリンスタンドの頻度も少ないので、1件目のスタンドでリタイヤ。時間も9時過ぎで、都合いいことに横がキャンプ場。ベルトコンベアに載せられるがごとくテントを張ってしまった。
しかし、それにしても「蚊」が多い。テントを張るたった数分間に、無数ともいえる蚊の集団に刺されまくった。服の上からでも容赦なくやられる。こんな寒いところで生きていけるのか?とも思うが、奴らには全く問題無いようだ。
隣のテントは自転車で旅をしているオランダ人老夫婦。彼らもオレと同じ日(8/1)に「ノールカップ」へ行こうとしたらしく、先日の嵐の話題で盛り上がってしまった。またここではじめて明らかになったことがある。オランダで散々苦労したあのサイクリングロードの話をしたら、90ccのカブは法的に高速道路を走行してもいいと言うではないか。自転車と同じ区分になるのは50cc未満のバイクだけなんだって。まぁ、色々と見られたから良かったことにしておこう。
ちなみに夕食は小さなレストランでトナカイの肉を賞味。これが最高にウマかった。
08/08 曇り|雨 進路を南に Inari/Hotelli Inari/273.9km
起床は10時。キャンプの朝も遅い。オランダ人老夫婦だけでなく、他に数グループいたキャンパーもみんな出発した後だった(笑)
天気は曇り。今にも雨が降りそうだったので、急いでテントを片付ける。蚊の襲来で多大な被害を受けたことは言うまでも無い。
この辺りもまだまだ寒いので、進路を南にとりフィンランド入りを目指す。国境までは約150km程度だが、ガソリンスタンドの頻度は相変らず少ない。小さな町のスタンドから20km程進んだところに次のスタンドの案内看板があって、その距離はなんと133km。ちなみに我がカブ号の航続距離は多く見積もって160km。しかし、その国道を外れフィンランドに入国したので、それより早くスタンドを見つけることが出来た。助かった。
新しい国に入国する時にいつも思うのだが、どうして国境にATMが無いのかが不思議。現地通貨をスムーズにゲット出来るので便利だと思うのだが・・・
今回は近くに銀行があったので助かった。しかしATMは無く窓口のみ。ノルウェー時間からフィンランド時間に変わるので時間は1時間進み、ギリギリ営業時間内。クレジットカードでのキャッシングしか出来なかったので、VISAカードを使用し「フィンランドマルッカ」を手にした。またノルウェー・フィンランドはロシアとも国境を接している。それもここからわずか200km程。せっかくそこまで行ったんだから、どうしてロシアまで行かないの?と思う人もいるかもしれないが、ロシアはオレ達が考えているような安全なところではない。今まで会ったほとんど全ての人が「ロシアには行くな!」とオレに忠告したのだ。大きいバイクならともかく、カブでは狙われたら逃げることも出来ない。陸送の大型トラックも決して1台では走らない。町から町をつなぐ区間では盗賊に襲われることが非常に多いのだそうだ。そんな話をイヤと言うほど聞かされ続けてきたので、到底行く気にはなれなかった。「命あっての物種」だしね。
フィンランドに入ってからは道路、景色ともに大きく変化した。相当疲れるノルウェーの道路とは全く異なり、ほとんど平坦で直線。フランスのそれに似ている。「タイガ」と呼ばれる針葉樹林帯に入ったため、「針葉樹林と湖」という典型的なフィンランドの風景になった。国境手前から振り出した雨が、さらに強くなったので視界が悪い。視界が悪い為かもしれないが、トナカイの数も激減したように思う。と油断していたら、道路にトナカイが飛び出してきた!急ブレーキをかけるという程でもなかったが、一瞬「ヒヤッ」としたよ。しかし、どうしてこうも雨が降るのかねぇ・・・
夕方には目的地である「イナリ」という面白い名前の町に到着。しかし笑うこと無かれ。この「イナリ」はサーミ人にとって重要な町の1つで、商業の中心地だそうだ。といっても小さな町なので、とてもそんな風には見えないんだけどね。ここで2泊し、この町を散策するとしよう。
08/09 曇り イナリというところ Inari/Hotelli Inari/0km
今日は「イナリ」の観光。ここは右写真の「イナリ湖」と呼ばれる湖のほとりにある町で、有名な観光地なのだそうだ。その為、道路沿いには土産物屋が建ち並んでいる。インフォメーションで地図をもらい、まず「SIIDA」というサーミ文化の博物館へ。ちょっと距離はあるが、てくてく歩いていくのもなかなか良い。この博物館はそれほど大きくは無いが、非常に良く出来た博物館。映像や音を織り交ぜているのに混沌としておらず、上手に整理されているので理解しやすい。また野外にはサーミの住居だけでなく生活様式がわかるように展示に工夫がなされており、たいへん楽しめた。またここで昼飯も食ったが、50FIM(約1,000円)でトナカイ肉の煮込みやサーモンスープが食べ放題。あまりに美味かったので、ウエイトレスのお姉さんの冷たい視線を感じながらも動けない程に食ってしまった(^_^;;
満腹の後は土産物屋を見て回る。明らかに大衆的な店や、サーミ人の手による質の良いハンドメイド品を扱う店など。そのうち1件で見つけた「サーミの民族衣装の帽子」がえらく気に入ってしまった。明らかにお土産を意識した安いものとは違い、しっかり作り込まれていて何よりも美しい。もちろん値段は張るが、それに見合う品だとオレは思ったので購入。寒い寒い冬にこれをかぶってスキーをするのだ(笑)
明日ここを発って北極圏脱出を狙っていたのだが、さらにもう一泊することにした。というのは、インフォメーションでもらった地図に「Reindeer Farm」という場所を見つけたからだ。「トナカイ牧場」とはこれ如何に?ここから約14kmのところらしいので、明日は朝からそこへ行ってみよう。
08/10 曇り/雨 世界は狭い Inari/Hotelli Inari/29.1km
曇り空のもと予定通り「トナカイ牧場」向かう。イナリからの道沿いには森と湖だけで、あまりに何も無いので道を間違えたかと思う程だった。気を付けて見ないと見過ごす程の小さな看板を発見したので一安心。未舗装路を少し走ると普通の民家風の建物に行き当たった。ここでいいのか?とキョロキョロしていると、中から人が出てきた。
30分後から「サーミの体験プログラム」が始まるというので参加することに。といっても今のところオレ1人。しかし、数分後スイスのルガーノから来たという家族が到着。さらに時間ギリギリに1人のライダーがやってきた。なんとこのライダーは、先日ノルウェーにて北極圏入りした時、博物館のチケットをくれた人と一緒にいた人だった。彼はオレのことを覚えていて、もちろん俺も覚えていた。同じGPS(Garmin GPS3+)を使っていたので印象に残っていたが、彼も同じだった。「こんなこともあるねんなぁ・・・」と話しつつプログラムスタート。
まずはトナカイの餌やり。手の上にのせた餌をパクパク食べてくれる。もちろん人になついているので撫でても大丈夫。子どものトナカイもいて、とてもかわいかったよ。
その後は放牧しているトナカイを捕まえる練習。ロープを投げて角に引っ掛けるというもの。もちろん標的は本物のトナカイじゃないけどね(笑)
他には、サーミの生活用具や暖かそうな衣服を見せてもらったり、テントの中でコーヒーをとクッキー片手に「ヨイク」と呼ばれる民族音楽を聞いたりと、充実した内容。「ヨイク」は太鼓のような打楽器と声で奏でる音楽で、非常に力強いものだった。声だけのものもあり、歌い手のおばさんは4曲も披露してくれた。
もちろんサーミの文化や言語についても色々と話してくれ、2時間のプログラムはあっという間に終わってしまった。これで60FIM(約1200円)というのだから安い。ちなみに今はキャンペーン中で、普段は85FIMらしい。それでも安いと思うけどね。
その後、ドイツ人ライダーと記念撮影。彼のバイクを横に並べると、いかにカブが小さいかがわかる。彼は大きいバイクに乗っているけど、のんびりと旅をするのが好きだということで、オレと似ている。今まで見たことのないこのバイクが気になるとのことで、色々と質問を受けた。エンジンやパワー、燃費やその歴史など・・・バイク好き(他にアフリカツインというホンダのバイクを所有。ドイツのオーナーズクラブのリーダーなんだって)の彼がとても感動した様子だったので、やっぱりカブは凄い存在だと思ったね。
彼とは「オレ達のことだから、多分またどこかで会うだろうよ。なんたってこの世界は狭いからね(笑)」と言ってお別れ。もちろん「Good bye.」ではなく「See you again!」。本当に世界って狭いもんだよなぁ。オレも彼とはまたどこかで会う気がするんだよね・・・
イナリへ戻ってきてからはカブの整備。アップダウンとワインディングロードの連続だったノルウェーの長距離走行(オスロからノールカップまで約2500km。この距離を激しい風雨の中わずか6日で走ったというののは、日本記録じゃないだろうか?)の為、リアのスプロケットがかなり減ってきている。もうすでに交換時期だが、しばらく粘ってストックホルムについたらタイヤと一緒に交換しよう。予備を1つ持っているけど、このペースで減るとなるとさらにもう1ついる計算になるので入手を考えておかないといけないな。さらに今履いている「METZELER MO1」はやはりダメタイヤだった。現在約6,000km走行しているけど、うち半分は雨だった(不運にも程があるぞ!)のでそれほど「持ち」もいいとは言えないだろう。ストックホルムまであと1,000km強。それまでは耐えてくれないと困るが、どう考えても持ちそうにないんだよね、これが・・・。そんなこんなでフロントスプロケットもチェックしていた時に雹混じりの大雨にやられた。数本のボルトを締めるちょっとの間だったが、頭のから足の先までびしょ濡れ。おかげでシャワーと洗濯を余儀なくさせられてしまった。
08/11 曇り/雨 なかなか進まない Sodankyla/Nilimella Leirintaalue(ユース)/199.1km
12時にイナリを発ちさらに南下。とはいえ今日は少ししか進まなかった。途中のパーキングではフィンランド人夫婦(全く英語はダメ)から野生のブルーベリーを両手に山盛りと、豆(長さ5センチ程度で鞘の皮が厚い)を片手に山盛りをもらった。ブルーベリーは問題無いだろうが、豆は中身を生でボリボリ食った。おじさんも生で食べてたけど大丈夫なのか不安(笑)
その後、道路沿いに「ゴールドミュージアム」なる看板を見つけたので寄ってみた。ラップランドは砂金の産出でも有名だが、その博物館のあるところは産地のひとつらしい。世界各国の砂金産地やその採取方法、歴史なども紹介されていて、もちろん日本の北海道についても書かれていた。
昼飯はまたトナカイ。トナカイの肉を薄くスライスしたものとマッシュポテトなんだけど、ソースがなんとラズベリー(だと思う)ジャム。塩味のものにジャムをつけるというのは日本人の味覚にはあまり合わないので、ジャム無しで食ったがもちろん美味い。ジャムをつけても美味しいんだけど、つけない方がベターだった。
フィンランド入りしてから、トナカイの数がめっきり減ったと書いたが、今日だけで数匹は見た。数が減っているというより、この辺りにいるのは全て放牧されているトナカイのようだ。なかには首輪や鈴をつけてるやつもいたし、道路の真中を堂々と歩いているやつまで。車が来ても避けさえしないので、野生のはずはない。ノールカップの近くのやつは、野生のものが多いと思う。Sveinさんもそう言ってたしね。
路上の土産物屋にも立ち寄り、小さなトナカイ角のキーホルダーを購入。今度のは前に買ったのとは違い角に毛が生えている。昨日トナカイ牧場で聞いた話によると、オスの角には毛が生えているそうだ。しかしその毛は抜けやすいので、売り物になっている角のほとんどは毛が無い。毛があるのはふさふさしていて気持ちいいぞ。さらにウサギらしき小動物の足の飾り物。これもいい触り心地・・・こんな感じでくだらないものがどんどん増えていくのだ(笑)
途中おなじみの雨にやられやる気も無くなり、7時頃ユースの看板を見つけたのでそのままチェックイン。このユースは夏のみ開いているようで、客はオレ以外に1人で閑散としている。部屋は寮そのもの(ミュージシャンのポスターまで貼ってある)なので、普段は学生寮なんだろうな。
08/12 曇り|雨 北極圏脱出! Rovaniemi/HOSTEL TERVASHONKA(ユース)/159.3km
昨夜泊まったユースは珍しく12時チェックアウトなので、しっかり12時にチェックアウト。今日中にスウェーデン入りを考えていたのだが、道中土砂降りの雨にまたやられた。前が見えないほどの状況で、屋根のあったバス停で雨宿り。暗い雲が空一面に広がっており、どう考えても止みそうになく、小雨になった瞬間を見計らって再出発。それ以降は小雨のままだったので助かった。
フィンランドの典型的な風景と言えば、多くの人は「湖と森」を想像するだろう。でも、実際この国の道路を走ってみるとこれだけでは足りない。足りないものとは「電信柱と電線」。道路沿いには常に電線があるのだ。左写真は道路から側道にちょっと入った所で撮ったものだが、決して絵葉書には成り得ない典型的な風景。
その後も南に進み、とうとう長かった北極圏を脱出した。もちろんここにもノルウェーと同じように「北極圏センター」なる建物があったが、あまりに観光地化していたので「北極圏」へ来たという実感は薄い。またフィンランドといえばご存知「サンタクロース」の国。サンタクロースビレッジなるものや、多くの土産物屋が建ち並んでいる。北極圏郵便局というのもあり、そこにはある申込書があって、それに名前と住所を記入し35FIMを支払うとクリスマスにサンタから手紙が届くサービスもやっているようだ。またこの郵便局には黄色と赤の2種類のポストがあり、黄色は特別な消印が押される通常郵便で、赤はクリスマスにあわせて届けられるようになっている。間違えて黄色に入れてしまったら、クリスマスカードが8月に届くという楽しいシステムなのだ(笑)
ここでタイヤをチェックしてみると、やはりもう限界。ドライ路面ならともかく、ウエット路面ではもうだめだ。10km程離れた北極圏間近の「Rovaniemi」という町は結構大きい町なのでここで宿をとり、バイク屋を探してタイヤを交換することにしよう。
かなりわかりにくい看板で見つけるのに苦労したが、無事ユースにチェックイン。外でタバコをふかしていると、同じユースに泊まっていた日本人バックパッカーと友達になった。彼はロンドン在住の大学生で今まで2ヶ月程中欧を周ってきたとのこと。
夕食はユースのキッチンで彼と一緒に。オレは手持ちのクノールのスープパスタを作り、彼はパスタとスウェーデンで買った名物の肉団子。ビールと共にお互い半分ずつ食べ腹一杯。食後は彼と色々と話した。これからヘルシンキへ下り、シベリア鉄道でロシアを通過し日本まで帰るらしい。かなりパワフルなバックパッカーだ。また彼から中欧の最新の情報も得られた。感謝、感謝。