カブでヨーロッパ一周編

 太陽に選ばれた場所 北極圏 北上編 [ノルウェー] (2001/07/30-08/01)

・07/30 北極圏へ到達
・07/31 さらに北へ
・08/01 自然の脅威

通貨単位:NOK(ノルウェークローネ)/1NOK=約13.6円


07/30 雨 北極圏へ到達 Innhavet/HAMAROY HOTELL/375.3km

 あいにく天気は雨。早めに出発する予定だったが、結局12時になってしまった。というのも、深夜2時までかかってページを作り公衆電話でアップしようとしたのだが、公衆電話が壊れていた(ちなみに深夜2時でも外は明るい)・・・そんな訳でどっと疲れが出た。

 ほとんど一日中雨が降り、風もあるという最悪なコンディション。今日の目的地は500km以上離れたナルヴィクという港町だったが、やはり無謀だった。全然届かず、夕方9時頃に約150km手前の町で体力も気力も尽きた(笑)
 それでも400km近く走ったのは我ながら感心する。

 今日とうとう、北緯66度33分より以北の「北極圏」へ到達した。このラインより北の地域でのみ「白夜」という太陽のショーが繰り広げられる。といってもすでに7月末なので、この辺りの白夜はすでに終わっている。国道沿いには、ここから北極圏というモニュメントがあり、博物館や土産物屋、喫茶店、郵便局が入った大きな建物もあって、そこで右写真の「お土産切手」を購入。これはお土産目的に作られた切手で価値は無い。1枚1NOKと値段も安いので記念にはいいだろう。

 博物館は学割でも30NOKだったので入ろうかどうか悩んでいたら、ごついバイクに乗ったライダーがオレに入場チケットをくれた。彼はすでに見学済みなのでちょっと気はひけたが、心の中で「リサイクルは良い事だ」と言い聞かせ入場。ちょうど北ノルウェーのスライドショーの上映直前だったので、いい写真をたくさん見ることが出来た。他に北極圏に生息する動物の剥製などもあり、小さいながらもいい内容。なにより嬉しかったのは建物の中は暖かいということ。外は雨風混じりでおまけに標高は約800mもあるので強烈に寒い。さすがは北極圏。

 不時着したモーテルは電話付きで、無事昨日のデータをアップすることができた。しかしここもデジタル回線。ノルウェーは電話のデジタル化が進んでいるのだろうか・・・

07/31 曇り|雨 さらに北へ Samuelsberg/Manndalen Sjobuer(キャビン)/375.1km

 たとえ雨でも出発するつもりだったが、外は雨だけでなく風も強い。普段「雨なら連泊」が基本なのだが、ここではそうはいかない。というのも北極圏の夏は常にこんな天気だからだ。昨日ネットに接続した時に天気予報を調べ、この先3日の予報は常に雨。もっと北上し早く最北端の「ノールカップ」へたどり着きたいというのもある。だらだらしていたら出発は結局12時。

 しかし厚い雲に覆われているものの雨はほとんど降っていないので助かった。風は相変わらす強い。またまたフェリー代を払わされるものの、どんどん北へ進んでいく。北極圏だけに周りの景色は寂しい。フィヨルドを横切る大きな橋を渡った時にドイツでくらった程の横風にやられ涙が出そうだったことを除けば快調に進み、3時頃には昨日の目的地「ナルヴィク」へ到着。
  ここはスウェーデンで産出する鉄鉱石の「冬季」輸出港なので、港にはそれらしい大きな施設が見えた。ところでどうして「冬季」と限定するのかといえば、夏季はバルト海沿岸のスウェーデン国内の港から輸出できるが、冬季は海が凍結してしまうから。ここ「ナルヴィク」は北極圏内なのでもちろん緯度的には北だが、北大西洋海流(メキシコ湾流)という暖流の影響で冬でも凍結しない「不凍港」なので、ここから輸出するというわけ。

 「ナルヴィク」を越えた辺りからまた雨が降り出した。ガソリンスタンドの頻度も少ないのでスタンドがあるたびにストップを強いられる。今日は5回給油。ちなみに昨日は7回。

 また気温も場所によっては10度を下回る。手元の温度計(これは目安程度。こいつがまたかなりいい加減)では8度だったが、実際はもう少し低いと思う。雨・風・寒さと三拍子揃っているので、非常に辛い。

 でもそんな辛いことばかりでもなく、道路沿いにあったサーミ人の土産物屋でトナカイの角を購入した。この土産物屋は全く観光化されてなくて、サーミの民族衣装を着たおばあさんが自分達で作ったものをテントの中に並べて売っている。トナカイの角(15cm程)のお値段は15NOK。でもその時、200NOK札とコイン11NOKしか持っていなかったので札を渡したら、11NOKにまけてくれた。観光化されていたら絶対50NOKはするね。

 でもいいことはこれ1つで、さらに辛いことが起こった。走行中に「カランコロン」とものが金属物が落ちる音がしたので、すぐにストップ。ギアをニュートラルにしようと思ったら・・・なんとシフトチェンジのレバーが無い(笑)
 すぐに走って取りに行き回収したが、ボルトはそれよりも前に落ちてしまっていたと思われる。このままでは走ることさえ出来ないので、雨の中ロープをほどいて荷物を降ろし、工具箱からピッチの合うネジで応急修理。時間はわずか15分程度のロスだったが、エンジン近くで常に振動を受け、さらに毎日幾度と無く動かしている場所なのに、増し締めするのを忘れていた自分のいい加減さに呆れてしまった。北へ向かうのに躍起になっていたとはいえ、こんな基本的なことをおろそかにしていたらいつか痛い目を見そうだ。ちなみにヨーロッパではミリ規格なので、新しいボルトはガソリンスタンドで難なく購入出来た。

 雨・風・寒さともに和らぐこともなく、9時過ぎにたどり着いた小さな町で宿をとる。今日は一風変わってキャビン。家族が泊まれるデカいログハウスをオレ1人で使うのもなかなかいい。値段は高い(700NOK、約1万円弱)が、2階建てでベッドが4つもあり、キッチンやサウナまである。家族で泊まって1万円弱ならかなりいい施設だろう。日本なら1人1万円はするだろうね。

08/01(前編) 雨 自然の脅威 ***/***/380.7km

 昨夜から強風は止まず。昨日駐車する時にはサイドスタンドを使用し、風に耐えられるよう考慮して止めておいたのにカブが倒れていた。どこも壊れて無かったのは不幸中の幸い。

 最北の地「ノールカップ」まで約500kmなので今日中に着けるだろうと思い、雨と強風の中11時半頃出発。ここから悲劇は始まる・・・

 当たり前だが追い風の時は信じられないくらいに快調にすすむ。向かい風なら平坦なところで2速全開でも30kmが限界。横風の時は言葉では表現できない状況だ。と言ってもほとんどは山沿の海岸線で、風が舞い込んでくる為、追い風か向かい風。周りに山がなく開けているところは進む向きによって横風のところもある。ここまで北にくると強烈に寒く、足のつま先の感覚が無くなる。わずか標高300m程の地点で手元の温度計が2度を示していた。草原が広がっている風を避ける場所が全く無い所で一度止まってみたが、今まで台風の時でさえ体験したことのない強風だった。踏ん張らないと立っても居られない。そんな中を走るわけだから、横風の時はまさに命がけ。左から風が吹いている時は、わずかに右カーブのところも車体を左に倒して走らないとならない。とはいえカブで走っている方が、立っている時よりもかなりマシに感じられる。言葉ではこれくらいしか書けないが、実際はまさに地獄。ビデオカメラで撮影したい気分だったよ。

 それでも350km程走り、最後の分岐までやってきた。左が「ノールカップ」へ、右が「ロシア国境」へ。ガソリンの残量も気になるところだが、もちろんこんなところにスタンドは無い。地図を見る限り、海岸線の道路で半島の東側を走っている。風は西から吹いているのでちょうど風裏になると踏んでいたのだが・・・つづく


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