旅の知恵

海外ツーリング・・・現地で調達するのか、こちらから輸送するのかなど

・車両の調達
 海外をツーリングしたいのであれば、その車両の入手をまず考えよう。単純に考えても、現地で調達した方が輸送費もかからないので安上がりだと思いつくだろうが、世の中はそんな単純ではないのだ・・・
 国内で車やバイクに乗るときに必要なものは何か?ナンバープレート、自賠責保険、税金、任意保険etc. と多くのものが必要だ。これは海外とて例外ではない。現地に自分の籍があれば、全く問題なくナンバー、保険、税金ともクリアできる。仕事や勉強の都合で海外に住むという場合を除いて、海外をツーリングしたいと思っている人はおそらく現地で住民登録するとは考えにくい。その場合、現地で車両および、ナンバー、保険、税金となんとかしなければならず、私の調べた限り事実上不可能に近い。そのため、国内で車両を購入し、それを船便で現地に輸送するのが合法的にツーリングができる最も簡単な方法であろう。
・海外へ持ち出す際に必要になる書類

国外運転免許証:海外で車両を運転するには国外でも通用する免許が必要になる(なお競技に参加する場合には「国際C級ライセンス」以上も必要になるが、競技については割愛させていただく)。この国外運転免許証は、運転免許管理課へ免許証と写真(縦5cm、横4cm)1枚と手数料2,600円を持って行き、その場で申請書を記入するだけで即日で交付される。なお交付についての不明な点は最寄の警察署で聞こう。また有効期限は発給の日から1年間。
  ここで最も注意しなければいけない点は、国外運転免許証の最終ページにスタンプが押されている種類の車しか運転できないということだ。つまり、普通免許では海外では原付に乗れない。原付で海外ツーリングをしようと思っている方は、普通免許では不可能なので、二輪の免許を取得しておこう。

国際ナンバープレートカルネ:これらはいずれもJAFが窓口になっている。国際ナンバープレートは登録番号がラテン文字で表記されたもので、これがないと公道を走行することは出来ない。また、カルネとは自動車カルネの略で、自動二輪を含む自家用自動車の一時輸入の際の通関手続を簡単にする書類のこと。簡単に言えば、ある国に車両を持ち込む際に必ずその国から車両を持ち出すという条件で、登録手続きや関税の納付を免除するというものである。有効期限は基本的には1年で、やむを得ない場合を除いては延長は認められない。だから、1年を超える旅の場合は現地のナンバーを取得するしか方法はない。また、国際ナンバープレートとカルネは同時に申請するのが普通である。
 それらの申請に必要な書類はJAFの窓口で無料で配布している。「自動車カルネのご案内」という小冊子で、これらが申請書とその説明になっている。しかし、そろえる書類や書き方は非常にややこしいのでわかりやすく解説しよう。またここでは担保保証として一般的な「カルネ保険」を用いる場合についてである。また、カルネの申請前に輸送手段を確保しておかなければならない。運送会社と申請前から相談して輸出予定日、輸出税関、船積時期、輸送費などの見積りを出してもらっておこう。

登録証書:陸運事務所で発行される重要な証明書。カルネ手帳の表紙裏に貼り付けて使用するもので、申請時に用意しておかなければならない。この登録証書の申請に必要な書類は、JAFからもらえる小冊子には書いていない。また地方によって用意する書類は少し異なるので、陸運事務所に直接問い合わせてみるとよい。発行は即日で行われる。
 今回、福岡市の陸運支局で必要だった書類は・・・
  *車検証(原付の場合は標識交付証明書:市町村区役所で即日発行)のコピー
  *旅行計画書および旅行ルート地図(カルネ申請用と同じものでよい)
  *パスポート
  *運転免許証
  *実印

印鑑証明書(名義人2部/保証人2部):カルネ申請用に各1部、カルネ保険用に各1部必要。市町村区役所で即日発行してもらえる。申請前3ヶ月以内に発行されたもの。

スペアパーツリストパーソナルアイテムズリスト(各2部):自分で作成する。車両と同時に持ち込むスペアパーツやパーソナルズアイテムををまとめたもの。ここに記入したものは関税を免除されるが、また必ず日本に持ち帰らなければならない。

旅行計画書旅行ルート地図(各2部):自分で作成する。登録証書申請に各1部、カルネ申請用に各1部必要。

車検証(原付の場合は標識交付証明書。市町村区役所で即日発行。福岡市の場合は「原動機付自転車 課税台帳登載事項証明書」であった。各自治体によって名称は異なるが、意味は同じである):カルネおよび登録証書申請用。陸運局、JAFともに提出するのはコピーでもよい。

カルネ申請書:JAF所定の用紙に記入。ポイントとして、旅行計画書において通過予定国ではない国を「通過予定国」の欄に記入してもよいということ。つまり、ルート変更で通過するかもしれない国は列挙しておかなければならない。また「自動車一時輸入書類保証保険申込書」に記入した予定国と同じにしなければならない。欄が足りなくなった場合は、通過予定国の欄をコピーしたものを、その欄の下に貼り付けて、実印で割り印をすればよい。

車両に関する記載:JAF所定の用紙に記入。「車両の価格」について、現在の価格はJAFが決めてくれるので記入しなくてよい。新車価格は新車購入時の総費用。つまりオプションと消費税込みの値段を記入する。中古車の場合は、その車両の税込みの新車価格でよいと思われる。

誓約書:JAF所定の用紙に記入。特に注意する点はないだろう。

自動車一時輸入書類保証保険申込書:JAF所定の用紙に記入。カルネ保険申込書と略される。「一時輸入書類を使用する予定の国」の欄には「カルネ申請書」に記入した予定国と同じ内容でなければならない。また、カルネ申請書同様に、旅行計画書において通過予定国ではない国であっても、ルート変更で通過するかもしれない国は列挙しておかなければならない。

国際ナンバープレート申込書:カルネ申請時にJAFにて用紙を渡されるので、その場で記入すればよい。特に問題はないだろう。

Jマーク:JAFにて購入できる。これは、車両が日本のものであるということを示すもので、金属製(1,570円)とビニール製(2枚1組520円)がある。

 これらの書類をJAFの窓口に提出後、約1週間でカルネが交付される。ナンバープレートも同じ位の期間で出来ると思われるが、場合によってもう少しかかるかもしれないので、余裕を持って申請を行おう。また、カルネは帰国後返却しないといけない。発給後の注意事項はカルネを参照していただきたい。

・輸送(輸出)
 カルネを用いて輸出する場合、関税は発生しないが、それでも様々な費用がかかる。会社によって料金は多少異なるが、多くのバイクの場合、余程小さいもの(ホンダのモンキーやゴリラ)でなければ、4立方メートルの特注の木箱に入れられることになる。梱包料は約60,000円とかなり高いが、フォークリフトで運ぶには木箱に入れないといけないので仕方がない。ヨーロッパ各都市までの輸送となると200,000円以上はかかるだろう。また、カルネ申請前に、運送会社と相談して輸出予定日、輸出税関、船積時期、輸送費などの見積りを出してもらっておこう。
 今回私は、パリに支店を持つ日通へ輸送を頼むことにし、福岡県北九州市小倉北区西港の日通商事梱包工場まで自走し、パリの日通倉庫まで船便での輸送で、約220,000円であった。
・車両改造

 車両の改造もまた必須である。長期ツーリングとなると自然と荷物も多くなるので、積載量を増やす必要がある。また、耐久性のある部品をに変えたり、壊れるかもしれない部品を新品にしておくことも必要。タイヤなどのかさばる消耗品は現地で調達できるのかを事前に調べておき、現地で入手困難な消耗品はもちろん持参しなければならない。
 また、外国では日本車は非常に高額なため、盗難には十分気をつけなければならない。U字ロックを最低2つは用意し、少しでもバイクを離れる時には必ず施錠しよう。
  他に、あると便利なものとしてGPS(Global Positioning System)。世界中どこであっても自分が今どこにいるのかを把握できるシステムである。十分持ち運びが出来るほど小さいので、邪魔になるということはないだろう。地図のソフトをパソコンから転送でき、簡易カーナビとしても利用可能。科学技術の進歩が生み出した非常に有効なモノである。

・現地で必要になるもの
 ヨーロッパ諸国には非常に心強い保険がある。日本での自賠責保険にあたり、旅行者が入るための強制保険で、俗に「グリーンカード」と呼ばれるもの。日本の自賠責保険とは異なり、事故を起こした時に「役に立つ」保険である。対人無制限と保障内容は厚い。この保険は現地で加入するほか無いので、車両を受け取る前に現地で加入しておこう。しかし、このグリーンカードを購入できる場所は極端に限られているらしく、現地の人に聞いてもほとんど分からないらしい・・・
 他に、現地に知り合いがいればベスト!困った時に色々相談に乗ってくれるだろう。といっても、なかなかそんな知り合いはいないだろうが。親戚縁者や友人に知り合いがいないかを、しらみつぶしに探してみよう(笑)