カブでヨーロッパ一周編

 さらば中欧 [クロアチア・スロヴェニア・オーストリア・チェコ] (2001/10/14-10/18)

・10/14 出会いの町「ザグレブ」
・10/15 まさに日本人宿
・10/16 走れや走れ!
・10/17 美味いビールを飲むぞ!
・10/18 ビール工場見学

通貨単位:Kn(クーナ)/1Kn=約14.6円 SIT(トラール)/1SIT=約0.52円 OS(シリング)/1OS=約8.1円 Kc(チェココルナ)/1Kc=約3.2円


10/14 晴れ 出会いの町「ザグレブ」 Zagreb/RJ OMLADINSKI HOSTEL(ユース)/133.8km

 もちろん出発は昼。目的地「ザグレブ」までは近いし、朝早く起きる必要はゼロ。天気もよくのんびりと荷造りし、鼻歌交じりで出発。

 クロアチアとの国境までは約20kmなのですぐに国境に着いた。ハンガリーの出国カスタムの管理官が強面で振り分けザックを指差し「この中身は?」と聞いてきた。この質問はたまに受ける。こういう時にはカルネに貼り付けている(が、もうすでにはがれている)積荷の一覧表を示す。カルネを見て「入国時にスタンプが押されてないけど・・・」と顔に似合わず申し訳無さそうに言うので、「チェコもスロヴァキアも押されへんかったし、ハンガリーの入国でもカルネさえ見せてないよ」と苦笑しながら言い返したら、「まぁ、今はどこもそんなもんさ。」と笑いながらカルネを返してくれた。イライラすることも多いが、微笑ましい瞬間も多い。だから国境を越えるのはちょっと楽しみだったりする。

 ハンガリーを出国したら、次は数km後に控えるクロアチアの入国。ここの管理官はかなり陽気な人で、オレが来るなり「ジャパンか?ジャパンか?」と騒ぎ出した。あまり人が通らない田舎の国境なので、こんな変わったバイクに乗った日本人がやって来たのには驚きだったのだろう。パスポートチェックは程々で色々と質問をしてくる。入国審査と言えば聞こえはいいが、興味本位で聞きたいだけってのがまるわかりなのがちょっと楽しい。「サッカーは好きか?」なんて入国とは関係ないだろう(笑)

 入国したらまず一番にすること。両替である。通貨がないとガソリンを補給できないし飯も食えない。EUではないので国境に両替屋が何軒かあるのだが、あいにく今日は日曜日で休み・・・仕方が無いので近くのレストランのマスターに両替出来るところを聞いてみたら、「じゃあ、オレがしてやるよ」と言って親切にも両替してくれた。レートは両替屋と同じで手数料も無し。世の中いい人もいるもんだ(^_^

 そういえば、クロアチアの高速道路はカブでも走行できるようだ。というのも、国境から続く道が突然高速道路に変わり、料金所が現れた。追い返されるのかなぁ、と恐る恐る料金所まで行くと、親父は「10クーナ」と一言。そのまま高速を走ることになった。高速は途中で通行止めになっていて、国道へ出たが、こんな天気のいい日は国道でのんびり走る方が気持ちがいい。右写真は道路からの一風景。

 クロアチアでは車に追い越される時、度々クラクションを鳴らされる。でもこれは「邪魔じゃ!」という意味では無くて、「頑張れよ!」と励ましてくれているのでとても気分がいい。追い越した後に手を振ってくれたり、路上で農作業をしている人が大声をあげて手を振ってくれる。ザグレブへ着く前に、すでにクロアチアが好きになってしまった(^_^;;

 夕方前にはザグレブに入り、目星をつけていたユースに入る。ユースにいてもすることは無いので早速街に繰り出してみた。あても無くふらふら歩いていると展望台になっている塔を発見したので登ることにした。

 このチケット売り場の兄ちゃんがこれまた親切な人で、オレが「今回初めてクロアチアへ来た」と言ったら、クロアチアの見所なんかをたくさん教えてくれた。南のアドリア海沿岸や湖のある国立公園などは前から行きたかったが、話を聞いてますます行きたくなったよ。でも残念ながら今回は時間の都合でパスするしかないんだよなぁ・・・その兄ちゃんはオレに「今回は目一杯クロアチアを楽しんでくれ。そしてまた、この国へ来てくれよ」と言ったのが印象的だった。

 自然や建物だけが売りの所は2回以上行くことは少ないだろう。でも、人の「やさしさ」が感じられるところは2回、3回、4回と来てしまうんじゃないかな。この国にはそういうところがあると思う。その言葉を聞いた時、ふと「ポルトガル」を思い出した・・・

 夕陽に染まるザグレブ市街を塔の上から見た後、ユースへ戻って来る途中・・・前から日本人らしき人が歩いてくる。それもあの顔、どこかで見た気がする・・・と思っていたらやっぱり前に会ったことのある人だった(笑)

 その人とは、フィンランドのヘルシンキで会った山本さん(右写真の左端)。お互いの第一声が「何でこんなとこにおんねん(笑)」。ちなみに2人とも関西人。あの時、オレはエストニアのタリンへフェリーで渡り、彼は夜行列車で北極圏のロヴァニエミへ向ったはず。ルートは全く違うけど、こんなところで鉢合わせとは・・・

 ちなみに今日のユースは日本人だらけ。さらに驚いたことに「カブでヨーロッパを回っている人が居るらしいよ」という噂を聞いていたという人までその中にいた始末。まさに出会いの町「ザグレブ」である。

 そんなみんなと、ビールを飲んで喋っているうちに夜も更けていった・・・

10/15 晴れ まさに日本人宿 Zagreb/RJ OMLADINSKI HOSTEL(ユース)/0km

 今日は朝から、オレの噂を聞いていたという山中さんと一緒に朝飯を食いに中心街へ。人が集まる広場には多くの人が溢れており、西側の都市と変わりない様子だ。そんな様子を眺めながら、オープンカフェでパンとコーヒーを飲むってのもなかなかいい。

 朝食の後は市内散策。露店が結構出ていて、焼きとうもろこし(マズい)や焼き栗(ウマ過ぎ)を売っている。「何をしたか?」と問われると、何をしたというわけでは無いが、なかなか充実だった気がするな。

 今日、このユースを旅立って行ったのが3人。そして新しくやって来たのが2人。これまた日本人2人って言うんだから、驚きを通り越して呆れてしまった(笑)

 ザグレブは大して見所がある町でも無いのに、ユースが日本人宿と化してしまった。なんでこんな事になるんだろう・・・不思議だなぁ。

10/16 晴れ 走れや走れ! Mollersdorf/PENSION iris/329.4km

 ここのユースは限りなくいい加減だが、気合を入れて朝9時出発を狙っていた。いつものように遅れはしたものの、9時半には荷造りを完了し出発!即席日本人宿に別れを告げた。

 今日は出来るだけ距離を稼ぐつもりをしていたし、少し霧が出ていたので高速道路を使うことにした。視界約300mの霧の中、高速道路へ突入。しばらく走るとやはり料金所が現れた。と、その横に注意書きが・・・「150cc以下のバイクは走行不可」

 ここでUターンして引き返すのも馬鹿げているので、そのまま料金所へ。追い返されるかなぁ、と心配していたけど、親父は一言「10クーナ」。金を払うとあっさりゲートが開いた。高速は路肩が広いので、カブでもそこを走れば問題ない。というよりこんな霧の中だと、一般道より安全だと思う。

 スロヴェニアとの国境手前まで来た頃には霧もかなりおさまっており、天気のいい中スロヴェニアへ。時間があればスロヴェニアもじっくり見たかったんだけど、そのまま通過しオーストリアへ。

 オーストリアへ入ると地形が一変した。バルト三国以降ほとんど平坦な道ばかりだったのに、久しぶりの山越え。山越えと言っても、高いところで標高1,000m程なので大したことは無いが、やはり距離は伸びない。山の景色や斜面に築かれた町が懐かしい。ヘアピンカーブも久々で、嬉しくなって車体を倒していたら、突然路面が水浸しになっていて、タイヤが滑りヒヤっとした(^_^;;

 そんな感じで暗くなるまで走ったが、ウィーンの20km程手前の町に見つけた電話付きペンションに泊まることになった。久々にページをアップしておきたかったしちょうどいい。

 ここ最近いい天気が続いているが、明日もそう願いたい。出来れば明日中にチェコの「プルゼニュ」へ着きたい。というのも「プルゼニュ」はピルスナービールの発祥の地なのだ。走った後のビールはさぞかし美味いだろうな・・・

10/17 曇り 美味いビールを飲むぞ! Plzen/HOTEK CONTINENTAL PLZEN/349.7km

 願いはむなしく朝から曇り。おまけに霧もひどい。とはいえ、何としてでも美味いビールにありつきたいので朝10時半には出発した。

 ウィーンにはすぐに入ったが、ウィーンの中で迷う。一方通行が多いので大都市は困ったもの。さらに恥ずかしいことに、信号待ちで久々の立ちゴケをやってしまった(^_^;;

 苦労の末ウィーンを抜けた後は、ひたすら走るが霧雨で視界が悪く寒い。周りは草原と畑だけ。これでも遠くまで見渡せればすがすがしい気分になるが、霧のため数百メートル先までしか見えない・・・同じ景色の中を走り続けるのは精神的に辛いよ。

 そんなおもしろくない国道を走りチェコへ・・・のはずが途中で「工事による通行止め」になっていた。工事区間は「交互通行」にすべきだと思うのに、何故か一方通行にしている。チェコ方面からは通れるのに、こちらからは通れない。さらに「この先通行止め」の看板が出ているのが、工事現場の直前。もっと手前に看板を出して迂回ルートを書いてくれよ。

 でも、オレが乗っているのは車では無い・・・オレの乗り物は「バイクにもモペットにも化ける最強の乗り物『スーパーカブ』」である。工事をしているおっちゃんに「チェコに行きたい!行きたいんだよう!」とゴネると、「端の方を通っていけばいいよ」とあっさりお許しが出た(笑)

 工事区間を無事にパスし、次はいよいよチェコへ。免税店でマールボロライトを1カートン購入(1箱あたり約145円。チェコ国内だと160円位でオーストリアだと330円もするのだ!)。国境もあっさり通過し「プルゼニュ」を目指す。明るいうちに着けると思っていたが、ウィーンで迷ったのと、霧による遅れ、さらに工事区間のロスなどで「プルゼニュ」に入った頃には辺りは真っ暗になってしまった。途中の町で1泊しても良かったんだけど、美味いビールという誘惑には勝てなかった(^_^;;

 あっさり宿が見つかるとたかをくくっていたが、結構苦労してしまった。主要国道から市街に入ったら、どこの町にも中心街を示す看板があるのだが、また一方通行の工事区間にやられ小さな道を通ることになった。もちろん小さな道に看板は無く、公園横にあった市内地図で位置を把握。それに従い中心街へ行くもののホテルの類が見つからない。一方通行だらけの道をさまよい、やっと発見した1軒目のホテルで妥協。どデカい豪華そうなホテルだが、値段はそれなり(1泊860Kc=3,000円弱)だったし、鍵つきの駐車場にカブを停めさせてくれたのでまぁいいか。

 宿が決まった後はもちろん「ビール」である。チェコは世界的にもビールで有名な国で何種類ものビールが造られているらしい。その中でも最も有名なのが左写真の2つ。左が「プルゼニュスキー・プラズドロイ/Plzensky Plazdroj(ドイツ語でピルスナー・ウルクェル/Pilsner Urquell)」で、右が「ブディヨヴィツキー・ブドヴァル/Budejovicky Budvar(ドイツ語でブドバイザー・ブドヴァル/Budweiser Budvar)」。ここプルゼニュは左の「プルゼニュスキー・プラズドロイ」のおひざもとで、このビールは世界初のピルスナー・ビール(下面発酵酵母を使ったもので、オレ達が普段飲んでいる黄金色のビールのこと)なのだ。ちなみに右は、そこの醸造所で働いていた職人がアメリカへ渡り「バドワイザー」を造ったと言われているもの。つまりこっちが元祖ってわけ。

 もちろん今日は「プルゼニュスキー・プラズドロイ」。空腹も限界だったので、近くのレストランでまずジョッキを1杯。空きっ腹に染み渡るビールは最高の味。麦芽100%で泡まで美味いぞ。相席したチェコ人のおっちゃん(英語はダメ)が、絵を書いてチェコのビールやワインについてを教えてくれて、勉強しながらもう1杯。飯も安くて美味い。もちろんビールも安くて、1杯60円程。もう飲めないくらいに飲んで、千鳥足でホテルまで帰ってきた(^_^;;

 ベッドにもぐるとすぐに寝てしまい、11時間も寝てしまった(笑)

10/18 曇り ビール工場見学  Plzen/HOTEK CONTINENTAL PLZEN/0km

 今日はプルゼニュ観光。この街もご多分にもれず「旧市街」には教会や古い建物があるが、それもいささか飽きてきた。ここへ来た目的は「旧市街」では無く「ビール」。「ビール工場」へ行って、出来たてホヤホヤのビールを飲むのだ!

 無料地図を片手に徒歩で工場を目指す。工場に着くと、都合のいいことに工場見学のツアーが始まる30分前だったので参加してみることにした。100Kcのチケットを買い、案内係のおばさんに連れられ、ビール造りの工程や施設、創業当時の作り方なども英語とドイツ語で解説してくれた。チェコ人はみなドイツ語が話せるからか、チェコ語での解説は無い。説明もいいが、やはりビールのテイスティング。黄金色に輝く冷えたビールをコップに注いでくれ、手渡された刹那、その液体でオレの喉は潤された。「うまい!うますぎる!!」・・・この感動を伝えられないのが残念この上ない。

 工場見学の後は併設の土産物屋で帽子を買ってしまった。なかなか日本じゃ手に入らない一品だぞ。

 そんなプルゼニュの夜はもちろんビール。このビールを日本で市販したら、絶対売れると思うんだけどなぁ・・・どこかで売ってるのかな?

 明日はここを発ち、ドイツのニュルンベルグへ向う予定。中欧編は「ビール」で締めとなってしまったな(笑)


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