カブでヨーロッパ一周編

 北上開始! [ノルウェー] (2001/07/25-07/29)

・07/25 職業「旅人」へ
・07/26 ネット接続に苦労
・07/27 ソグネフィヨルド
・07/28 美しいフィヨルドと美味い魚
・07/29 ガソリンスタンドの苦楽

通貨単位:NOK(ノルウェークローネ)/1NOK=約13.6円


07/25 晴れ 職業「旅人」へ Oslo/HOTEL NORRONA/259.5km

 Peterのサマーハウスに居座ることはや8日。居候としての意識が目覚め始めてきたので、これはイカンということで、職業「旅人」へ復活することにした。マダガスカルから帰ってきてから居候続きだったので、早くカンを取り戻さないといけない。北の果てを目指し北上開始!今日の目的地はノルウェーのオスロ。

 やはり出発は昼過ぎ。オレはもともと涙もろいので別れ際はいつも辛い。特にこれだけお世話になった人と別れるのは正直悲しい。必死に涙をこらえたが、2つの目は涙で潤んでいた。Peterがオレを抱きしめて「Take care.」と言ってくれた時が一番嬉しく、そして辛い瞬間・・・

 途中フェリーを待っている間に何人かのライダーと話をしたり、ガソリンスタンドではいつものように笑われたりしながらも、オスロには夕方に到着。

 やはり大都市だけに宿探しには苦労する。Peterのところには電話が無かったので、ページのデータもアップしたいし、いくつかダウンロードしたいものもあったから今日は電話のある宿を探す。何軒かアタックしちょっと高そうな所だが、電話もありRJ-11型のジャックだったのでチェックイン。

 早速接続を試みるが、モデムに応答なし。スイスのように内2線式(一般的なタイプで日本もこれ)では無いのかと思い、受話器の形状もいいのでカプラーで接続。しかし、接続はするもののエラーが頻発。試行錯誤したがうまくいかず・・・入念に調べた結果、受話器のマイク(口の部分)でひろった音が、スピーカー(耳の部分)に流れている。これではうまく接続できる訳がない。早速フロントで違う電話機に変えてもらうように交渉するが、今日は遅いので明日ということになった。電話だけが目当てで高いホテルに泊まっているので、その電話が使えないとなると非常に腹が立つ。

 とはいえどうしようもないので、今日は早く寝ることにした。ここで2泊する予定なので、明日朝一番にフロントへ行くことにしよう。

07/26 晴れ ネット接続に苦労 Oslo/HOTEL NORRONA/0km

 朝8時という驚異的な時間にフロントで交渉。新しい電話機に変えてもらったのだが、なんとここの回線がISDNであることが判明した。新しい電話機は壁のスウェーデン式モジュラージャックをアダプターでRJ-45型(6線式のLANと共通)に変換している。アナログモデムで接続できなかった理由はわかった。しかし、今度は受話器の形状が良くない。何度かトライするが、接続してもパスワード認証さえクリアできない程の速度しか出ないので断念。こんなことなら天気もいいしキャンプにすればよかった。

 とりあえず、メールチェックはしておきたかったので街へ出て公衆電話でトライ。雑音が多く速度が稼げず苦労したものの、画像が添付されているメール以外は取得できた。カプラーで接続することが多いので画像を添付したメールは止めてもらいたいのだが・・・オレ宛てにメールを送る時はくれぐれも画像は添付しないでね。無事メールを取得できたが、ページのデータを上げる程の速度は出なかったので更新は断念。

 オスロで2泊する目的はバイキング博物館とフラム号博物館。まずはフェリー(バスやメトロと同じように短距離フェリーがある。なかなか楽しい)でバイキング博物館へ。発掘された船が展示されており迫力はあるが、展示が少なすぎる。Peterは「ファンタスティックだ」と言っていたが、オレにはそれ程でも無かったんだよね(^^;;

 しかしフラム号博物館は少ない展示にも関わらず十分に楽しめた。知らない人の為に書いておくと、フラム号とはノルウェーの極地探検船で1893年に北極点到達を目指し、氷の平原に3年間も閉じ込められたという船。船体を卵形にし、氷にぶつかった時はその上に乗り上げるような特別な設計がなされている。結局彼らは北極点には到達し得なかったが、今まで誰もなし得なかった北緯86度まで到達。氷の上での3年間は常に気候や生物の観測をしており、後に与えた影響は大きい。その船も展示してあって船内も見ることができる。他にはアムンゼンの探検に関する展示もあり、興味のある人は是非訪れてみたらいいと思う。

 併設する海洋博物館も目当ての1つだったが、特筆すべき程でもない。今まで数々のヨーロッパの主要海洋博物館を巡ってきたので、目が肥えてきたようだ。次に行く予定のPeterご推薦のストックホルム海洋博物館が楽しみ。バイキング二の舞じゃなかったらいいんだけどね(^_^;;

 明日はここを発ち、さらに北へ向かう予定。どこまで行けるかな?

07/27 晴れ|曇り ソグネフィヨルド Sogndal/Sogndal Vandrarheim(ユース)/430.5km

 オスロを10時に発ち、高速を疾走。大きな街から出る時は高速を走らないと苦労する。カブでは法律上は走行不可だと思うが、スウェーデンやノルウェーの特に大都市に出入りする高速は制限80km/hなのでカブでも安全に走ることができる。おかげで安全かつ快適に市外へ出ることが出来た。

 まず第一の目的地は「Kongsberg」という小さな町。ここは銀の鉱山があった事で有名な町なので、そこで産出した銀やその他鉱物標本を展示している博物館があることをPeterから聞いていたからだ。彼の言った通り素晴らしい標本が多く、うまく整理されて展示してあるので分かりやすい。もっとじっくり見たかったのだが荷物満載のカブを外に止めている以上、そう長居もできない。1時間程度で博物館を後にし、あとはひたすら北を目指して走る。

 今日の走行中に北緯60度線を突破。途中高度1000mを越える山越えを地点が何箇所もあり、近くの山には頂上付近には雪が残っていた。さすがに標高1000mとなると曇っていたら気温は12度程度なので寒い。またガソリンスタンドが約90kmも無い区間もあったりで、ガソリン残量にも気を使いながらの走行は疲れる。

 写真は約1,000年前の教会。道路脇にあって休憩がてら写真を撮影。木造の美しい建築だ。

 それでも400km以上走ったのは立派だろう。おかげで有名なソグネフィヨルドまで到達した。奥行き約200km、水深は1300m以上というノルウェー最大のフィヨルド。ちなみにフィヨルドとは、氷河期に押し寄せた氷によって陸地が削られ、その後氷が溶け海水が満たされた地形のことで、湾の入口では浅く、奥まったところ程深い。

 フェリーで湾を横切り、対岸へ渡ったところで都合良くユースを見つけたのでチェックイン。空腹も頂点に達していたので、荷物を運び込んですぐ、近くの中華料理屋で死ぬほど食ってやった。

07/28 曇り 美しいフィヨルドと美味い魚 Valsoyfjord/Valsoya Fjordcamping(キャンプ場)/396.3km

 10時ジャストに出発。というのもユースのチェックアウトが10時だから。この辺りはフィヨルドが入り組んでいるのでなかなか北へは進まず、曲がりくねった道や山越えなど難所が多い。さらにフェリーを使わないといけない区間もあって3回も船に乗った。スウェーデンと決定的に違うのは、国道にも関わらず有料だということ。またノルウェーは普通の国道なのにトンネルや橋があると有料区間が多く、金を絞られる。今日だけで7km級(滅茶苦茶長い。電灯が暗くかなり怖い)のトンネル2つ、3km級は多数、それ以下は無数・・・フェリー代と合わせて約180NOK(約2,500円)も払わさせられたのは痛い。さらに大きな都市に出入りする国道だけでなく、郊外の道路にも突然料金所がある。これらはバイクは無料だからいいんだけど、とにかく金のかかる国だ。

 それでもこの美しい自然(写真左は道路からの一風景)に惹かれて多くの旅行者が集まってくる。途中フェリー乗り場でドイツ人ライダーと話をしたり、ガソリンスタンドで給油中に、イタリア人ライダーから「写真を撮ってもいいか」と問われたりと、旅人と会話することも多い。

 途中、写真右の「ザ・ベスト・オブ・フィヨルド」とも言うべき素晴らしい場所を通過。無数のフィヨルドがあるけど、恐らくここが最高のフィヨルドだろう。観光客やそれ目当ての土産物屋も多いが、それも納得できる程だ。晴れていたら最高だったんだけどね。

 夕方以降は地図上では主要ルートのはずなのに、全然交通が無い道路をひたすら走行。交通が無いと言うことは、言い換えればガソリンスタンドも無いということ。ガス欠の恐怖におびえながら、道路沿いにキャンプ場を見つけたのでテントを張る。日没後にガス欠という最悪の事態は免れたが、明日は日曜日なので心配。まぁ明日のことは明日考えよう。

 キャンプ場ではオレの隣にテントを張っていた、南ノルウェーから来たと言う釣り人夫婦と仲良くなった。オレもテントを張り、キャンプ場すぐ横のフィヨルドで釣りをしている彼らを見に行ったら「トライしてみなよ」ってことで釣り道具を貸してくれた。実はルアー釣りに関しては少々自信がある。ルアーを自分の意図通りに動かしてやる。なんとたった3投で魚がかかった!久しぶりのこの手ごたえが心地よい。釣り上げたのは見たことも無い奇妙な魚(体長約45cm)でナマズのようにブヨブヨしていて、ヒゲまで生えている。彼らが言うには「バカリャウ」の一種らしい。「バカリャウ」とはポルトガルで散々食った白身魚。

 ちょうど腹も減っていたところだったので、キッチン(このキャンプ場にはキッチンまであったが、テント1つ張るだけで80NOK(約1,100円)は高過ぎる)まで持っていって、手持ちの小さなナイフで3枚におろし(これが大変苦労した。魚自体は柔らかいが皮が強烈に硬い)、刺身にして食ってやった。身は引き締まっていてなかなかの美味だったが、ご飯が無かったのが残念。ご飯の代わりにレーズンパンを食ったが、これはやはり失敗だった(笑)

07/29 雨|曇り ガソリンスタンドの苦楽 Mosjoen/MOSJOEN Camping A/S(ROM)/520.8km

 深夜から雨が降りだし、今日はあいにくの雨。9時頃一瞬雨が止んだので、大急ぎでテントを片付けて荷作り開始。でもすぐに降りだし、結局濡れた。

 出発は10時。まず問題なのはガソリン。日曜日でも店員がいるガソリンスタンドは、それなりに大きな町か、主要な国道沿いにしか無い。地図を見る限り選択肢は2つ。1つは途中で道をそれて約15km離れた町へ行く方法、もう1つはそのまま直進し大きな町まで走る方法。前者はそれ程大きな町ではないので、果たして営業中のスタンドがあるかどうかが不明。後者は大きな町までガソリンが持つかどうかの問題。アップダウンの激しい道なら確実にガス欠だ。予備ボトルも空なので苦しい選択を強いられた・・・

 とりあえず分岐まで移動。途中クレジットカードしか受け付けないスタンドがあった。田舎は結構これが多い。この手のスタンドはどういうわけか日本のカードは使えない。今までがそうだったように、やはり今回も使えなかった。というわけで分岐まで来たわけだが、オレが選んだのは前者。まず確実にその町まではたどり着けるからだ。カードのみのスタンドしか無かったら、客が来るまで待って交渉するという方法が取れるし、町に居さえすればなんとかなるだろう。

 その町へ入りスタンドを探す。そろそろ町を抜けるというのに見つからないので、愕然となりかけた刹那、町を抜ける直前に「ESSO」を発見!この時はマジで嬉しかった。これで大きな町まではたどり着けるので、そこで再給油すれば大丈夫だ。しかし、カブのタンク容量の小ささは大問題。10Lくらい入るタンクならこんな心配しなくて済むんだけどね(^_^;;

 とりあえず「ナルヴィク」という町を目指しひたすらE6を走る。途中の看板で「Narvik 900km」と出ていたので、あまりの遠さに落胆した。その後走ること約300km。「Nord Norge」と大きく書かれたところを通過。とうとう北ノルウェーに入ったのだ!

 ガソリンに関しては早め早めの給油を心がけ、500km以上走ったという理由もあり、今日だけでなんと7回も給油。しかし7回目の給油では楽しいことがあった。途中の町でオレを追い越していった車とばったり遭遇したのだ。彼らはオレを覚えていて、オレも彼らを覚えていた。というのもノルウェーでは珍しいチェコナンバーだったから。「チェコへ来たときには家においで」と言って住所と連絡先を教えてくれた。こういう出会いは楽しい。さらにそのスタンドのおばちゃんが、ワッペンとステッカー2枚(どちらも売り物)をくれた。旅をしていると色々と楽しいことが起こるものだ。


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