縦横夢走 2007年 沖縄 編

 島ぬ宝 (2007/08/20-08/23)

・08/20 東洋のガラパゴス
・08/21 マングローブ林を抜けて
・08/22 陸の孤島
・08/23 退屈な一日


08/20 曇り/雨 東洋のガラパゴス 沖縄県竹富町(西表島)/民宿マリウド/133.2km

 昨夜も記事を書いた後はいつものように酒盛りが執り行われた。昨日は総勢10名程で盛り上がったのだが、今宵が最後という人も当然いるわけでメンバーは毎日少しずつ変わっていく。かく言うオレも西表島に移動するので、また戻っては来るものの戻ってきた時のメンバーはまた変わっていることだろう。そのあたりも“ドミトリーの安宿”の魅力である。中には仕事の為にここで1年以上住んでいるという猛者もいるわけだが、色々な人が集まってくるので、毎日新しい出会いが待ってるというのは楽しいもんだ。

 そうそう。カニステル(エッグフルーツ)の事を書いておかねばなるまい。昨夜みんなで集まった時に食べてみたのだが、結論からいうとなかなか美味しかった。食感はゆで卵の黄身のようにパサパサしていて水気が無いという話だったが、まさにそんな感じ。ポロポロのかぼちゃみたいな食感で、味は天津甘栗に似たような甘さだった。

 今朝は7時半の少し前に石垣港へ行き西表島行きのフェリーの乗船手続きをした。出港は8時なので人間だけなら直前でもいいのだが、歩行者よりも手続きが若干あるのに加え、カブを積み込むのは「離島桟橋」と少し離れた場所なので、その分早くなるわけだ。

 フェリーと言っても高速フェリーなので、車は1台くらいしか積み込めない。カブも画像のようにしっかりと固定される。石垣港を出港後は鳩間島に一度寄港し、1時間15分停泊してから西表島の上原港に入る。鳩間島では人間だけは下船できるので、1時間で島のほとんどの道路は歩ける小さな島だった。道路も港付近だけ舗装されており、民家も港の近くにしかない。残りは少しの畑と森と海という非常にのどかな島だった。

 西表島の上原港で下船後は、予約していた宿に荷物を預ける。西表島は沖縄県で2番目に大きい島らしいが、道路はその半分の外周しか通っていない。まずは北西方向の終点である「白浜港」を目指す。道中「星砂の浜」に立ち寄ってみたが、竹富島の星砂の浜と違い、ここの砂はなんと全部が星砂!表面は円磨されており角が取れているものも多かったが、それでもちょっと驚きだった。

 道路の終点「白浜港」からは、陸の孤島である舟浮集落にフェリーが出ている。が、本数も少なく時間も微妙だったので今回はキャンセル・・・ちなみにフェリーは舟浮からさらに先の網取というところにも出ているようだが、それは週1本らしい・・・つまり、一度行くと1週間は帰って来られないというわけだ。

 白浜港からは時計回りに南東の端を目指して走る。途中の食堂で空腹を満たし、道路脇からマングローブ林を観察。

 ここに設置されていた看板には他に興味深いことが書かれていたので、それも書いておこう。
  西表島にはイリオモテヤマネコをはじめセマルハコガメやカンムリワシ、キシノウエトカゲなどの貴重な動物も多い。その為、それらの動物を保護するために、道路の下に小動物が通る用のトンネルを作ったり、歩道の縁石に切れ目を入れたり、傾斜の緩い側溝や片方だけに勾配をつけている側溝を作ったりと、数多くの工夫がされているようだ。

0820c そこからさらに進み、サキシマスオウの群落を観察。サキシマスオウとは、根が“板”のように発達した木。昔はこの根を舟の舵に用いたらしいが、何とも不思議な植物に見入ってしまった。

 やがて道路は終点になるが、その前に忘勿石(わすれないし)という所に寄ってみた。県道から未舗装の道路に入り、しばらく進むと海岸に出る。海岸を200m程歩いて、大きな岩を越えると突然大きな石碑が姿を現す。説明を読んでみると、戦時中に波照間島から強制疎開で西表島につれてこられた人々の事に関するものだった。当時の西表島にはマラリアがあり、そんな島に無理やり連れて来られて死んでいった多くの人々のことを悲しむ碑であることが分かった・・・マラリアはここを占領した米軍によって撲滅されたわけだが、そのお陰で今オレがこうして旅が出来ている。またアメリカの占領下にあった為にこの自然が保存されているというのも否定できない事実である。

 県道は終点だが、その後しばらく道は続き、最後は南風見田の浜というところで道が無くなる。南風見田の浜まで来る人はほとんど居ないようでビーチはオレの貸切状態。天気が良かったら泳いでも良かったのだが、今日は海を眺めるだけで引き返してきた。

 夕方からは宿の近くの漁港で釣り。50センチくらいのイワシの仲間(?)がルアーにヒットしたものの、やり取りしているときに針を外されてしまった・・・かなり残念だったが、こういうこともあるので仕方あるまい。また明日リベンジするのみである。

 夕食後は宿開催のツアーに参加し、ヤシガニ観察へ出かけてみた。参加者はオレ1人だったので、宿の人と2人だけで行くことになった。ヤシガニは殻を持たないヤドカリの仲間で、普段は琉球石灰岩に出来た穴の奥深くに隠れているそうだ。それが夜になるとそこからエサを求めて這い出してくるのだが、懐中電灯を片手に岩の間を中心にじっくりと探していく。
  そんな感じで見事ヤシガニを発見(ロールオーバーイメージ)。ちなみに食べると味噌の部分が非常に美味しいらしいが、最近は数も少なくなっているとのことなので今夜は観察するだけ。ヤシガニ料理というのもあるが、べらぼうに高価でオレには手が出ないところが残念だ。

 今日は夕方スコールがあったので夜は非常に涼しくなった。この宿のクーラーはコイン式(1時間100円)なのだが、今夜はクーラー無しでも快適に寝られそうだ。

08/21 曇り マングローブ林を抜けて 沖縄県竹富町(西表島)/民宿マリウド/9.2km

 今朝は6時起き。今日は1日中西表島を楽しもうということで、眠い目をこすりながら近くの漁港に釣りに出かけた。やたらとルアーにアタックしてくるのが20cmくらいのメッキアジだが、他に30cmくらいのこちらでタマンと呼ばれるフエフキダイの一種を釣ることが出来た。

 朝食後はあらかじめ申し込んでいたカヌー&トレッキングツアーに参加することに・・・オレは普段、こういったツアーは好きでは無いので個人的に行動することが多いが、友人が勧めてくれた「ピナイサーラの滝の上」に行く道がよくわからないということと、カヌーにも乗ってみたかったということもあったので参加してみることにしたのだ。

 まずはカヌーに乗ってヒナイ川を遡って行く。上陸地点からは徒歩で滝の上へのトレッキング・・・と言っても歩道がきっちり整備されており、登りやすい道なので楽勝。ただ、山の中は風が抜けないので非常に蒸し暑く、たくさん汗をかいた。これだったらカヌーだけレンタルして個人でも来れる位だったが、道が分からないのでは仕方がない。 ピナイサーラの滝は落差約100m。つまり登った道も高さにすると100m程度なので、まぁそんな感じだ(笑)

 滝の上からの眺めはまさに絶景!足元には亜熱帯のジャングルとヒナイ川。その先には船浦橋と珊瑚礁に囲まれた鳩離島。さらに沖には昨日訪れた鳩間島までが望める。フェンスなどはないので、ギリギリまで寄っていって下を覗き込んでみたが、目がくらみそうな高さだった・・・さすがにこの様子はデジカメで撮影できなかったが、下の滝壷の近くに水が溜まっているところで泳いでいる人がもの凄く小さく見えた。

 この川にはテナガエビがいるのだが、それを捕まえて昼食の足しにしよう!ということで、ガイドさんの持っていた小さな網を借りて、オレは清流でテナガエビ取りをすることになった(笑)
なかなかすばしっこいが、結構簡単にすくえる。とりあえず全員分を確保したので、ガイドさんが用意してくれた八重山そばの上には、茹でていい赤さになったテナガエビが添えられることになった。こういうのは童心に返ったとでも言うか、いつでも夢中になって取ってしまう。

 道中の亜熱帯のジャングルでは色々な植物や動物に出会うことが出来た。昨日の日記に書いたサキシマスオウノキやヤブニッケイと呼ばれるローリエに似たような匂いがする葉っぱを持つ木など。キノボリトカゲや、毒を持つ毛虫なども居て、普段見慣れない植物や動物は見ているだけでも楽しい。

 その後はもと来た道を下山し、一旦上陸地点まで戻ってから、別ルートで滝壷を目指す。こっちの道はさらに楽勝で20分もあれば目的地に到着する。あまりに暑かったので、荷物を置くやいなや滝壷のそばに出来た水が溜まっているところにドボンと飛び込んだが、何ともいえない気持ちよさだった。ただ、深いところは3m程あるそうで、当然足がつかないところもあるので注意が必要だ。

0821b 下から滝を見上げると、これまた凄い迫力。もともと水量はそんなにないようなので、上から落ちてきた水がまるで粉雪のように降ってくる。この滝は船浦橋からも眺めることが出来るが、やっぱり真下から眺めてこそだと思う。

 今回のカヌーはオレ自身初めてだったが非常に楽しかった。今まで手漕ぎボートでは散々鍛えてきたのだが手漕ぎボートと比べるとやたらと簡単で、オマケに喫水が浅いのでスイスイ進んでくれる。今回上ったヒナイ川では、マングローブ林に囲まれたほとんど流れのない汽水域までなので、カヌーに最適な場所だというのもあるが、すぐに思い通りに操れるようになって、もっと遠くへ行きたいと思ってしまった。(ロールオーバーイメージ)

 そうそう。マングローブについて面白い話がいくつかあるのでそれも書いておこう。まず1つはマングローブの種子。これは20cmくらいの細長い棒のような形をしていて、それが真下に落ちて地面に運良く突き刺さると発芽するということ。満潮時などで下が水だったらアウトだが、干潮時ならセーフという、非常に原始的な方法らしい。
  他には、マングローブの葉を良く見るとほとんどが緑色なのだが、その中に黄色い葉がある。黄色い葉は枯れそうになって落ちかけている葉というわけではなくて、汽水域に住むマングローブは、吸い込んだ塩分を捨てる場所が必要になるわけ。それが黄色い葉だというのだ。真偽の程はいかに!?ということで、実際に緑と黄色の葉を少しカジってみたが、緑色の葉はあまり味がしなかったが、黄色の方は苦くて若干しょっぱい味がした(笑)
 また、「マングローブ林にはマングローブの葉が落ちていない」という話もあって、今日観察してみたが、確かに地面にはマングローブの葉がなかった。これは落ちた葉を食べるカニなどがたくさんいるらしく、まさにマングローブは“島ぬ宝(島の宝)”といったところだろうか。

 ツアーが終了したのは4時頃だったが、一旦宿に戻って釣具を持ってまたまた近くの港へ直行。今回はメッキアジ以外に、25cmくらいのミーバイと呼ばれるハタ科の魚を釣ることができた。ミーバイは美味しい魚らしいので、宿に差し入れとして持って帰ったら喜んでくれた。やはりこの辺は大阪と比べて釣り自体がイージーでよく釣れる。

 西表島にはもっと滞在したいが、あいにく今夜が最後。明日の夕方には石垣島へ高速フェリーで移動し、明後日の早朝に那覇行きのフェリーに乗り込むことになっている。石垣島ではホント寝るだけなので色々まわることは出来ない。那覇へ到着するのは明後日の夜なので、今から荷造りをして、明日は夕方までたっぷりと西表島を楽しもうと思う。

08/22 曇り|雨 陸の孤島 沖縄県石垣市/安宿風香/100.1km

 昨夜宿泊した民宿マリウドはちょっと面白いところがあって、広間に「水・コーヒー・紅茶・泡盛は無料」ですと書かれた貼り紙がある。実際、泡盛のボトルが置いてあり、好きなだけ飲んでもOKというちょっと笑えるサービスがある。そのお陰で、今朝も早朝から釣りに出かけるつもりが、寝過ごしてしまった(笑)

0822a まずは宿から北西方向の端、白浜港を目指す。といっても距離はしれているのですぐに到着。そこからはオレだけがフェリーに乗り込み、その先の「船浮」集落に行ってみた。「船浮」はいわゆる“陸の孤島”というやつで、地続きだが道路がない為、船で行くしかないという場所。しかし、ここは特別天然記念物「イリオモテヤマネコ」が最初に発見された場所として有名なところである(ロールオーバーイメージ)。

 以前は、この近くで石炭が産出するため、集落には多くの人が住んでいたようだが、今は50人程が暮らすのみの、ひっそりとした小さな村という表現が相応しいかもしれない。巡ることが出来る場所も少ないので、2時間で集落のほとんど全てを回ることが出来たが、中でも「イダの浜」という海岸はサンゴが敷き詰められたビーチで白く美しい海岸だったのが印象的だった。

0822b 他には旧日本軍が掘った洞窟なども残されており、今は道路として使われている洞窟もあり、入口の懐中電灯を拝借して通るようになっている。その先には「特攻艇格納庫」なんてのもあったりして、ここが戦争中は攻撃の拠点として使われていた痕跡も残っている。
  その先にはバナナの木がたくさんあって(ロールオーバーイメージ)、今ではのんびりと農業に勤しむ住民の姿が想像できる場所である。西表島に来てもここまで足を伸ばす人は少ないかもしれないが、ここはオレ好みのなかなかいい所だった。

 船浮から白浜港へ戻り、一度宿へ戻って預けていた荷物を受け取る。天気予報では雨っぽい感じだったので、あらかじめレインカバーを装着しておく。フェリーは来た時とは違う「大原」という港から出航する為、そちら方面に進んでいく。

 以前、電力会社のCMで有名になった由布島(ゆぶじま)へ立ち寄る。と言っても由布島へ渡るには水牛車でのんびりと渡るか、干潟をジャブジャブ歩いていくかしかないので、時間の都合もあり今回はパス。本当に島まで電柱と電線が続いており、なかなか面白い風景を楽しむことが出来た。

 まだ時間もちょっとあったので、大原の近くに流れる仲間川の近くを走っている農道を走ってみたが、なかなかいいところだった。マングローブ林の中を見られる場所もあり、それを抜けたかと思うと一面のサトウキビ畑・・・いかにも沖縄という景色でのんびり走るにはいい道かもしれない。

 フェリーは定刻通りに出港し、石垣島へ戻ってきた。が、戻ってきて早々雨・・・パラパラ降り出したところだったので、宿まで急いで戻ってきた。宿に着くやいなや本降りになりギリギリセーフ。と言っても結構濡れたんだけど。
 
一度荷物を置いてからカブで夕食を食べに出かけるつもりをしていたのだが、雨は止みそうな気配ではないので、予定を変更し徒歩で出かけた。帰り道まさに土砂降りに変わり、傘をさしていたのにかなり濡れてしまった。

 離島巡りも今夜が最後。明日の早朝には石垣島を発ち、那覇へ向かう。那覇には夜に到着するので、明日の夜は友人と石垣・西表の旅の話題で盛り上がることだろう。
 今回、石垣島・竹富島・鳩間島・西表島と巡ったが、離島によってそれぞれ雰囲気が違っていて、島それぞれの文化が育まれたんだなぁと思った。通信や交通が発達してからというもの、どこでも大して変わらない雰囲気になってしまいがちだが、これらの島にはまだまだたくさんの個性が残っている。この個性こそが「島ぬ宝」とでも呼ぶべきだろうか・・・次に訪れた時にも、また同じ感動があることを期待したい。

08/23 曇り 退屈な一日 沖縄県那覇市/友人の家/10.8km

 今日は石垣島から那覇へ移動する日。起床は4時10分・・・目覚ましは4時にセットしたはずなのに不思議だ(笑)

 フェリーは早朝出発なので、本来は乗船手続を昨日のうちに済ませておくのだが、昨日西表島から帰ってきた時には既に事務所が閉まっており、乗船前の早朝にすることになっていた。
出港は6時15分の予定だが、4時半~5時半に手続きをして下さい、とのことだったので5時過ぎに事務所へ行ってみた・・・すると1枚の貼り紙があって、「入港時間遅れの為、7時半から手続きを開始します」と。

 なんじゃそりゃ~!せっかく早起きしたのに、全くの無駄。フェリーは5時入港の予定だったが、結局9時になってようやく入港した。このフェリーは台湾から来たのだが、遅れた理由というのが、雨が降っていたので、現地の通関手続きがもたついた事らしい・・・まぁお国柄仕方ないところなんだろうなぁと納得するしかないけど。

 入港が遅れた分、当然出港も遅れる。ということは、那覇への到着も遅れるわけで、20時15分到着予定が結局24時になって、今日1日が終わった。

 船は大阪から那覇、那覇から石垣に渡ったフェリーと同じ船で、この船も3度目。中に何があるのかはリサーチ済である。つまり、ひたすら暇を持て余したということだ。結局ほとんどの時間を寝て過ごしたが、那覇から大阪へ帰る船内のことを考えると、ちょっぴり憂鬱になる。なんせ51時間の長旅。寝るにも限度があるし・・・ 


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